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日経産業新聞と日経クロステックで初めての試みとなる共同連載企画です。通信産業の行方を展望しつつ、最先端のテクノロジーを深堀りし、胎動を始めたポスト5Gの最前線に迫ります。

 今や国家の競争力をも左右する「5G(第5世代移動通信システム)」。欧州や中国の通信機器ベンダー、米国の巨大ITが覇権を争うなか、かつて世界をリードしていた日本勢の存在感はほぼ無いに等しい。

 そんな現状に危機感を抱き、日本の通信産業の再興に向けて立ち上がったのが、NTTとNECだ。5Gを進化させた「ポスト5G」をラストチャンスと捉え、再び世界に打って出る。日の丸連合は過去の敗戦を教訓に羽ばたけるか。

日本勢、通信敗戦の20年を教訓に捲土(けんど)重来へ
日本勢、通信敗戦の20年を教訓に捲土(けんど)重来へ
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海外に頼ってきた日本、「国家安全保障の危機」

 「NTTドコモの完全子会社化で日本の通信インフラ、国際競争力を強くします」

 2020年11月27日午後4時半すぎ。NTTの澤田純社長は12月1日付でドコモ社長に就く井伊基之氏を伴い官邸で菅義偉首相と向き合っていた。ドコモへのTOB(株式公開買い付け)完了報告が目的だったが、菅政権が求める携帯料金の引き下げへの言及は「頑張ります」のみ。わずか10分間の面談の大半を世界戦略や井伊氏の紹介に費やし、菅首相は「期待しています」と応えた。

 かつては世界をリードしていた日本の通信技術。しかしこの20年間で大きく地盤沈下した。「日本の情報通信業の技術貿易収支は9年間赤字続き。2014年に『世界に全く貢献しない日本のIT業界は、産業の存在価値が無い』という記事を読んでショックを受けた。NTTが日本発の技術でゲームチェンジを図っていくべきだ」。澤田社長は2020年11月に開催した自社の研究開発イベントで、こう悔しさと巻き返しを語った。

情報通信の技術貿易収支は9年間赤字が続く
情報通信の技術貿易収支は9年間赤字が続く
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 「日本の通信技術の地盤沈下は国家安全保障の危機だ」。2021年4月にNEC次期社長に就任する森田隆之副社長もこう強調する。

 5G、そしてポスト5G時代の通信はこれまでの人と人のコミュニケーションの役割から、工場の自動化や遠隔医療、自動運転など産業を支える社会基盤としての性格が強くなっていく。この成否は国家の競争力をも左右する。米国が同盟国に対して中国の通信機器大手、華為技術(ファーウェイ)の排除を執拗に求めるのも、5Gが国家安全保障上、極めて重要な基盤となるからだ。