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日経産業新聞と日経クロステックで初めての試みとなる共同連載企画です。通信産業の行方を展望しつつ、最先端のテクノロジーを深堀りし、胎動を始めたポスト5Gの最前線に迫ります。

 「多くのベンダーの機器を相互接続して通信できるようになった。実際にこれを見せたことの意義は大きい」

 通信関連の研究開発拠点が集まる横須賀リサーチパーク(YRP)。さまざまなベンダーの基地局を相互接続するイベント「O-RAN Plugfest/PoC」が2020年9月末に開かれ、この様子を見たNTTドコモの谷直樹常務執行役員は大きくうなずいた。

 O-RAN Plugfestは、さまざまな基地局製品を自由に組み合わせて使えるようにする「Open RAN」の業界団体「O-RAN Alliance」が主催。世界5カ所で同時開催された。日本会場ではドコモとKDDI、ソフトバンクの大手3社がホストとなり、日本と中国の会場にはNECや富士通、韓国サムスン電子、米マベニア(Mavenir)、米JMAワイヤレスなど10社以上のベンダーや部品メーカーが参加した。

現在のモバイルネットワークの課題
現在のモバイルネットワークの課題
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 携帯電話の基地局はアンテナと無線装置(RU:Radio Unit)、無線制御装置(DU:Distributed Unit、CU:Central Unit)で構成する。アンテナで送受信した電波から信号を取り出して処理するのがRU、ベースバンド処理と呼ばれる信号からデータを取り出して処理するのがDUやCUだ。

 携帯電話の標準化団体「3GPP」はこれらの機器をつなぐ標準仕様を策定している。しかし仕様が不十分で、基地局を構成する機器類はこれまで1社にそろえる必要があった。携帯電話事業者の設備投資の7割は基地局分野が占めるといわれる。これが中国の華為技術(ファーウェイ)やスウェーデン・エリクソン、フィンランド・ノキアの3社寡占につながる要因の1つとなった。

5Gで世界情勢が変化、「1社に頼るのではなく複数社で」

 大手ベンダーの囲い込みを逃れ、通信事業者主導でネットワークを構築したい――。このような思いから、ドコモや米AT&T、独ドイツテレコムなど世界の主要通信事業者が共同で2018年に設立した団体がO-RAN Allianceだ。

 O-RAN Allianceは機器同士をつなぐあらゆる仕様をオープンインターフェースとして規定する考え。中でも大手ベンダーによる囲い込み打破の切り札となるのが、基地局のRUとDUを結ぶフロントホール部分の仕様策定だ。これまでも共通仕様はあったが解釈の余地が大きく、事実上ベンダーの独自実装となっていた。

O-RAN Allianceが目指す世界
O-RAN Allianceが目指す世界
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 O-RAN Allianceは異なるベンダーの機器を組み合わせても動作するように仕様化した。例えばベンダーA社のDUに対し、ベンダーB社やC社のRUがつながるようになる。Open RANが「アリの一穴」となって大手ベンダーの寡占を打破する可能性がある。

 世界で5Gの商用化が進み、多様なニーズが生まれていることもOpen RANを後押しする。NECの河村厚男執行役員常務は「1社のベンダーに頼るのではなく、特長を持ったベンダーの機器をオープンに組み合わせるニーズが世界の通信事業者の間で高まっている」と語る。

 Open RANによって、楽天が全面採用した基地局への仮想化技術の適用、いわゆる「vRAN(virtualized RAN)」も採用しやすくなる。ファーウェイやエリクソンの基地局は専用のハードウエアとソフトウエアで構成する。高い性能を持つ一方、必要に応じて機能を追加できる柔軟性に欠ける。汎用サーバー上にソフトウエアで基地局を構成するvRANを導入することで、安価なハードウエアを活用できるようになる。Open RANの注目が高まるのには、vRANの導入でコストを下げたいという背景もある。