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日経産業新聞と日経クロステックで初めての試みとなる共同連載企画です。通信産業の行方を展望しつつ、最先端のテクノロジーを深掘りし、胎動を始めたポスト5Gの最前線に迫ります。

 NECとの資本業務提携や、半導体からネットワークに至るまで光技術を活用する「IOWN(アイオン)構想」を掲げ、再び世界へ挑戦するNTT。世界大手と日本勢で大きな差が開くなか、どう伍していくのか。グループ全体の技術戦略を担当するNTTの渋谷直樹副社長に聞いた。(聞き手は堀越 功=日経クロステック、高槻 芳=日経クロステック/日経コンピュータ、工藤 正晃=日本経済新聞社企業報道部)

NTTの渋谷直樹副社長。民営化一期生である1985年に入社。NTT東日本の設備畑が長く、2020年6月にNTT持ち株の副社長に就任した
NTTの渋谷直樹副社長。民営化一期生である1985年に入社。NTT東日本の設備畑が長く、2020年6月にNTT持ち株の副社長に就任した
(写真:遠藤 宏)
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3Gの時代、日本勢は世界で存在感を見せていました。なぜ地盤沈下してしまったのでしょうか。

 2000年当初はNTTドコモの「iモード」が世界をリードしていた。3G時代のキングだった。当時のドコモの時価総額は43兆円。「NTTは強すぎる」と世界からいわれたほどだ。iモードを世界に広げられればよかったが、米アップルが「iPhone」というシンプルなタッチ操作ができるハイセンスなデバイスを発明した。

 日本勢は端末にボタンをたくさん付けるなどデザインシンキング(デザイン思考)がうまくなかった。結局、アップルのゲームチェンジに日本勢はついていけず、4Gの世界観を作れなかった。3Gでイノベーションを起こしたために、イノベーションのジレンマもあったのだろう。

4Gの時代は基地局などインフラ面でも日本は存在感を失いました。

 ベンダー側に力がシフトしたからだろう。(スウェーデンの)エリクソンや(フィンランドの)ノキアが自ら作った製品を標準化し、ロックインしていった影響が大きい。特許などの面で力があるキャリア(通信事業者)が、世界でNTTくらいしかなくなってしまった背景もある。コネクティビティー(接続性)の部分ではキャリアの出る幕がなくなり、ベンダーが一気に作る態勢になった。キャリアは単純な「サービスの提供」という範囲にとどまってしまった。

5Gの時代に入り、オープン化の流れが出てきました。

 技術的な背景としては、汎用サーバーを使い仮想的にソフトウエアを乗せるだけで無線ネットワークができる世界が見えてきたことがある。ベンダーの作る製品は検証が楽で導入しやすい。しかしキャリアが他社に先駆けて独自のソフトウエアを入れたいというニーズには応えにくい。ベンダーの製品ロードマップに取り込んでもらうことをお願いして、他社を含めて誰に対してもリリースする機能に入らないといけない。オープンな世界になれば、キャリアが自由にソフトウエアを追加し差異化できる。NTTにとってもさまざまなサービスをソフトウエアで実現するプラットフォームが望ましい。

 オープン化は日本の技術をもう一度、世界に広げられるラストチャンスだ。我々がリスクを取りながら技術の仕掛けを作り、ゲームチェンジしていきたい。

もう一度、キャリアが主導していくということでしょうか。

 我々が、基盤技術の面で役目を果たさないといけないという思いが強い。

 菅義偉首相は所信表明演説で、2050年までに温暖化ガスの排出量を実質ゼロにする目標を掲げた。このままトラフィックが伸びると通信ネットワークだけで日本の発電量を超えるとの統計もある。現在の通信機器のまま対応していくと、とんでもない電力量になる。