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日経産業新聞と日経クロステックで初めての試みとなる共同連載企画です。通信産業の行方を展望しつつ、最先端のテクノロジーを深掘りし、胎動を始めたポスト5Gの最前線に迫ります。

 過去、再三にわたって通信インフラの海外市場開拓に挑戦してきたNEC。広がった大手との差をどう認識し、今後の追撃につなげるのか。2021年4月から社長としてNECを率いる森田隆之副社長に聞いた。(聞き手は高槻 芳=日経クロステック/日経コンピュータ、堀越 功=日経クロステック、水口 二季=日本経済新聞社企業報道部、インタビューは2020年10月)

NECの森田隆之副社長。1983年入社でM&A(合併・買収)部門に長く携わり、海外経験も豊富。2021年4月に社長就任予定
NECの森田隆之副社長。1983年入社でM&A(合併・買収)部門に長く携わり、海外経験も豊富。2021年4月に社長就任予定
(写真:日本経済新聞社)
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5G(第5世代移動通信システム)の先を見据えて通信事業者であるNTTと提携しました。

 一番近しい顧客として相互に意見交換をしてきたなかで、(提携が)必要だろうと決断した。

 そもそも通信事業は世界的に国が手掛けてきたが、歴史の流れのなかで日本ではNTTが民営化され、米国でも通信よりコンピューター分野が重視されるようになっていった。だが5Gの時代、通信はこれまでのように人と人のコミュニケーションを支えるだけでなく、世の中のすべてのモノがつながるなかで産業社会の基盤を担うことになる。それはすなわちナショナルセキュリティーや国際競争力にも関わる。通信事業に対する社会の理解や意識が変化してきた。

 その観点で言うと、日本の通信は3Gや4G(と世代が進むなか)で「地盤沈下」している。ある意味でナショナルセキュリティーや国際競争力の危機だと感じている。

 世界の通信事業者は、金融出身の社長が増えるなど「経済型」に変わっている。NTTは長期的な視点で研究に取り組んでいるが、それを具現化するとなると、生産技術や製造プロセス、コストなどさまざまな課題がある。(それらを補完できる)NECとNTTとが相互に連携することは非常に重要だ。環境が変化するなかで、改めて危機意識を共有することができた。

 今は(通信方式の)世代が変わる大きなチャンスというタイミングでもある。NECはグローバルのビジネスに過去何度も挑戦しながら、既存ベンダーの非常に厚い壁に阻まれてきた。(通信機器の)オープン化の動きも本格化しており、今回の提携で実績や運用の信頼性といった面を補完できると期待している。

3G、4Gと世代が進むなかで中国華為技術(ファーウェイ)が台頭しました。3大ベンダーによる事実上の寡占状態が生まれた状況をどう見ていますか。

 かつてのアナログ交換機時代のNECはグローバルで相当のシェアを持っていた。デジタル交換機では米国市場にもチャレンジし、アジアでも足場を築いた。転機となったのは3Gだ。日本に優れた技術はあったものの、標準化で欧州勢に比べてポジションを落とした。国内と海外向けに、二重の開発が必要な点も負担が大きかった。そこで独シーメンス(現ノキア)とも組んだが、全方位でやるのは難しかった。

 3Gから4Gにかけてファーウェイが大きく伸長したのは、特殊な事情もあるだろう。その頃は(地域によって)通信方式が異なり、開発費が高騰することから通信機器ベンダーがすべてに対応するのは難しかった。だが、なぜかファーウェイだけはすべての通信方式に対応できた。業界では謎だが、相当アグレッシブな戦略のなかで席巻していった。

 我々もファーウェイに対しては長い間、マイクロ波無線システムの「パソリンク」をOEM(相手先ブランドによる生産)供給していた。彼らが「マイクロ無線に進出する予定はない」としていたためだが、そのうちに自社で開発・製造するようになり、今では市場トップ3の一角を占めている。