宇宙航空研究開発機構(JAXA)は2020年9月、「H3ロケット」試験機1号機の打ち上げ延期を発表した。

 打ち上げを延期させたのは、開発中の主エンジン「LE-9」の燃焼試験で発覚した2つの亀裂だ。1つはエンジン燃焼室壁面に。もう1つは液体水素ターボポンプのタービンの動翼に発生した。これらを修正するための再設計と試験のやり直しに、1年を要すると判断した。

液体水素ターボポンプの構造
液体水素ターボポンプの構造
破損が起きたのは第2段動翼の羽根(タービンブレード)。76枚のブレードのうち2枚が金属疲労で破損した。(出所:JAXA)
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 燃焼室壁面の亀裂は、厳しい条件(高温作動条件)で試験した際に事前の想定以上に壁面が高温になったのが原因。液体水素ターボポンプの亀裂は、事前の解析では問題を起こさないと想定していた共振が、想定以上に大きくなった結果だった。

 入念な準備と試験を繰り返し、万全を期したはずの燃焼実験で、なぜ亀裂が生じたのか。打ち上げ延期によって、H3ロケットの開発と将来の運用はどうなるのか。

 JAXAの発表を基に、技術的な観点からトラブルの原因と今後の対策を解説する。

松浦 晋也(まつうら・しんや)
ノンフィクション作家/科学技術ジャーナリスト
松浦 晋也(まつうら・しんや) 松浦 晋也(まつうら・しんや)宇宙作家クラブ会員。1962年東京都出身。慶応義塾大学理工学部機械工学科卒、同大学院政策・メディア研究科修了。日経BP社記者として、1988年~92年に宇宙開発の取材に従事。その他メカニカル・エンジニアリング、パソコン、通信・放送分野などの取材経験を経た後、独立。宇宙開発、コンピューター・通信、交通論などの分野で取材・執筆活動を行っている。近著は『母さん、ごめん。 50代独身男の介護奮闘記』(日経BP)(写真:大槻 純一)