全7488文字
PR

 年末年始の恒例企画として、今年も日経デジタルヘルス編集部では、新たな1年を占う10大キーワードを選出しました。2021年を展望する10のキーワードを、五十音順で紹介していきます。果たして2021年はどのような年になるのでしょうか。

2021年を占う10大キーワード(五十音順)

1)ウエアラブル医療応用

 健康・医療分野で、ウエアラブル端末を積極的に活用する機運が高まってきた。例えば心房細動が疑われる不整脈を検知し、脳梗塞を予防する。新型コロナウイルス感染症では感染を防ぐ行動を促し、初期症状の発生を予測する研究が進んでいる。ウエアラブル端末は疾患の早期発見につなげる「アラート」を発する役割や、治療の予後を良好にする「フォロー」の役割を担うと期待されている。

 先行するのが、利用者に「アラート」を発し疾患の早期発見につなげる取り組みだ。米スタンフォード大学は2019年11月、臨床試験の結果として、米Apple(アップル)の「Apple Watch」で心拍を計測することが不整脈の一種である心房細動を検知するのに役立つと発表。ウエアラブル端末の役割の変化を印象付けた。Appleは米国などで心房細動の可能性がある心拍を利用者に通知する他、心電図を計測する機能を提供してきた。

 これまで日本では心房細動の可能性がある心拍の通知や心電図を計測する機能は利用できなかった。厚生労働省は2020年9月、Apple Watchで利用する「家庭用心電計プログラム」と「家庭用心拍数モニタプログラム」を医療機器プログラムとして承認した。今後、日本で使用できるApple Watchの通知機能の幅が広がる見通しだ。

 新型コロナウイルス感染症の患者のフォローにも、ウエアラブル端末が役立つ可能性がある。2020年8月、金沢大学で新型コロナウイルス患者の重症化予測の臨床研究が始まった。新型コロナが重症化する状態を定量化し、症状に合った治療や対応のフォローに役立てようというものだ。米Fitbit(フィットビット)のウエアラブル端末「Charge3」を1カ月間装着してもらい、病状とウエアラブル端末のデータを解析する。

 日本では、医療現場で活用しやすいように医療機器としてウエアラブル端末の開発を目指す企業が多い。遠隔モニタリングの市場の拡大を見据え、今後も開発に参入する企業が増える可能性がありそうだ。

2)遠隔リハビリ

 遠隔リハビリの技術やサービスの開発が加速している。AIやIoT、ウエアラブル端末を活用して、自宅にいる患者が離れた場所にいる医師や作業療法士らのアドバイスを受けながらリハビリを実施できるようになってきた。遠隔リハビリは、新型コロナウイルス感染症の拡大で通院に抵抗のある人のリハビリ支援につながる可能性がある。

 日本初となる遠隔による「心臓リハビリ」の医師主導治験が2020年7月に始まった。遠隔心臓リハビリの安全性や効果を確かめる。心臓リハビリは、心不全などの心疾患の患者が、心臓機能の低下を抑えるために運動などを実施するもの。再発や再入院を防止する効果があるとされるが、実際には実施率が低いのが現状だ。特に高齢の患者は通院距離や通院する手段がハードルになり、定期的にリハビリを続けにくいと指摘されている。

 治験で使う遠隔心臓リハビリシステムは、大阪大学発ベンチャーのリモハブが開発した。医師が利用するアプリと患者が利用するアプリ、ウエアラブル心電計、IoTバイクで構成する。患者の血圧や脈拍、心電図をリアルタイムに遠隔地の医師らと共有。医師はそれらの情報や問診の情報を参考にしてIoTバイクを動かすスピードなどを指導し、患者はアドバイスを受けながらリハビリを進める。

 AIを活用して効果的なトレーニングプランを提案する遠隔リハビリを開発する動きもある。病院への情報通信技術(ICT)の導入などを積極的に手掛ける北原病院グループが、AI開発を手掛けるベンチャーのエクサウィザーズと遠隔リハビリ分野で手を組んだ。共同開発した遠隔リハビリサービスを、2020年6月末に北原リハビリテーション病院に試験導入した。

 他にも、遠隔リハビリを実施する際のコミュニケーションを容易にするデバイスが開発されている。京セラが開発したヘッドセット型ウエアラブルシステムだ。東京医科歯科大学が導入を検討している。リハビリ中に患者が医師や作業療法士らと会話できたり、運動中の血中酸素飽和度(SpO2)などのバイタルデータをリアルタイムに取得したりする。医師らがデータを確認しながら適切な運動量を指導することにつながるという。