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 「同僚の状況がつかめずコミュニケーションが取りにくい」「雑談しづらい」。新型コロナ対策で在宅勤務に取り組む企業ではこうした課題に直面している。解決策として注目が集まるのが「仮想オフィスサービス」だ。本特集では3回に分け、仮想オフィスサービスとは何か、メリットはどういうものかなどを分かりやすく解説する。今回は3次元の仮想オフィスを提供するサービスを取り上げる。

 3次元仮想オフィスサービスは3次元CG(コンピューターグラフィックス)で構築された仮想オフィスの中を、ユーザーがアバターを介して、他のメンバーとコミュニケーションを取れるようにしたものだ。仮想オフィスに出社している人のアバターが表示されるので、誰が誰と打ち合わせをしているのかなどが分かる。音声通話やチャット、画面共有などを使ってコミュニケーションを取ることができる。

3次元仮想オフィスサービスの例
サービス名(提供会社名)概要と特徴最低料金(税別)
RISA(OPSION)ユーザーを表すアバターは最大1000種類のカスタマイズが可能。音声通話、チャット、画面共有の機能は会議室にいるユーザーだけが利用できるように制御したり、画面を見ていないユーザーに通知を送ったりできる特徴がある月2000円(1ユーザー)
Synergy Global 4U(テンナイン・コミュニケーション)アバター同士が音声でチャットしたり、ジェスチャーで表現したりできる。空間内にあるスクリーンを使った画面共有や映像の投映などが可能。オフィスの他にもカンファレンスホールやシアター、ビーチなどがあり大規模な空間が特徴月2万9800円(同時接続8ユーザーでのオフィス利用)
Walkabout Workplace(日立ソリューションズ)オフィスフロア上に配置されたユーザーを表すアイコンの位置などから他のユーザーの様子が分かり、音声通話やビデオ通話ができる。ユーザーへ専用部屋も割り当てられる。3次元コンテンツがリアルに近い特徴がある月2000~ 2500円(1ユーザー)

 3次元仮想オフィスサービスにはOPSIONの「RISA」やテンナイン・コミュニケーションの「Synergy Global 4U」、日立ソリューションズの「Walkabout Workplace」などがある。提供開始時期はRISAが2019年9月、Walkabout Workplace とSynergy Global 4Uが2020年8月で、ここ1年余りで相次ぎ登場した目新しいサービスといえる。

 3次元仮想オフィスサービスの最大の特徴はユーザーに「オフィスで働いている」という実感を持ちやすくしている点だ。

 OPSIONの深野崇社長は3Dを使うことのメリットを、「そこに人がいる感覚や空間を共有している感覚が高まり、臨場感を得やすくなる。3D空間とアバターの活用で、他のユーザーに気軽に声をかけやすくなる」と説明する。テンナイン・コミュニケーションの須藤新之介グローバル・コミュニケーション部コーディネーターも「新しい生活様式が求められる時代に、自宅にいながらもオフィスに出勤しているような感覚を味わえる」という。

仮想オフィスサービス「RISA」の画面例
仮想オフィスサービス「RISA」の画面例
(出所:OPSION)
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 こうした3次元仮想オフィスサービスのメリットに、新型コロナ対策でテレワークを大規模に実施している企業も関心を寄せている。テンナイン・コミュニケーションの須藤コーディネーターによると、社内のコミュニケーションで課題を感じている企業を中心に、問い合わせが寄せられているという。「特にテレワークによって、出勤の感覚が薄れて業務効率が低下しているといった問題に直面している企業からの問い合わせが多い」という。

 日立ソリューションズにもWalkabout Workplaceの提供を始めた2020年8月から同年11月上旬までの間に、問い合わせが100件以上寄せられた。同社ワークスタイルイノベーション本部ワークスタイルイノベーション企画部の小倉文寿部長は「新型コロナ対策で在宅勤務を実施していたり、新常態における働き方として在宅勤務を検討したりしている企業や、社員が自宅などで分散して働いている状況でも組織の一体感を醸成したいと考えている企業が導入を検討している」という。

 2019年9月からRISAの提供を始めたOPSIONの深野社長によると2019年はテレワークが浸透しておらず、RISAで解決を目指す「コミュニケーションが取りづらい」といった課題を示してもなかなか企業には響かなかったという。しかし、「コロナ後は3カ月で問い合わせ企業数が100社を超えた。我々が2019年から掲げていた課題感が顕在化したようだ」という。導入が進んでいるのは、製造業などで長い歴史を持つ企業が多いそうだ。「これまでのオフィス出勤で、対面コミュニケーションが当たり前だった企業ほど、テレワークになってからコミュニケーションで困っている印象がある」と深野社長はみる。

 出社時の対面コミュニケーションには、相手の様子が見える良さや、すれ違ったりコーヒーを入れに行ったりしたときに偶発的に始まる良さがある。深野社長は「対面であれば生まれるきっかけがテレワークではなくなってしまい、ちょっとした会話をするにもハードルが上がっている」と指摘する。ハードルを下げる手段として、3次元仮想オフィスサービスに注目が集まっているようだ。

ログインすると開放的な「空間」が広がる

 各社が提供するサービスを使うと、どのような環境で働くことができるのか、具体的に見ていくことにしよう。開放的な「空間」や高精細の「オフィス」といった3次元コンテンツを通して、ユーザーが実際にオフィスで働いている感覚を得られるような工夫を凝らしている。

 開放的な空間を提供しているのが、Synergy Global 4UやRISAだ。Synergy Global 4U の特徴は広大な仮想空間になっている点だ。ログインすると、ユーザーはアバターとして、ビルやホール、ビーチやサッカー場などがある1つの大きな島に降り立つ。操作上の制約が少なく、プレーヤーが自由に行動できるコンピューターゲームの世界「オープンワールド」に近いイメージだ。

 仮想オフィスはこの広大な空間の中に設けてある。「オフィス利用の他、イベントやセミナー、テーマを決めた教室などを開催したり、ビーチを眺めながらおしゃべりしたり、ユーザーが好きなようにこの世界を活用できる」(須藤コーディネーター)。

仮想オフィスサービス「Synergy Global 4U」の画面例。広大な仮想世界の中に設置したオフィスで勤務できる
仮想オフィスサービス「Synergy Global 4U」の画面例。広大な仮想世界の中に設置したオフィスで勤務できる
(出所:テンナイン・コミュニケーション)
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 ユーザーはアバターを介して仮想空間を動き回ったり、他のアバターとコミュニケーションを取ったりすることができる。コミュニケーションの手段は音声チャットやアバターによるジェスチャーがある。さらに、施設やオフィスの会議室などに設置されたスクリーンを使って、ファイルやパソコンのデスクトップ画面を共有したり、映像を投映したりできる。他のアバターに向けてファイルを送信する機能も備える。

Synergy Global 4Uでは会議室に設置したスクリーン(中央)に資料などを投映できる
Synergy Global 4Uでは会議室に設置したスクリーン(中央)に資料などを投映できる
(出所:テンナイン・コミュニケーション)
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 須藤コーディネーターは「既存のWeb会議サービスは参加者のカメラ映像が2次元の画面に並ぶが、Synergy Global 4Uでは3D空間に参加者が集まってコミュニケーションが取れる。ユーザーが抱きがちなテレワークの閉塞感を軽減させて、実際にオフィスで勤務しているような感覚をより強く味わえる」と説明する。