全2819文字
PR

 2023年ごろから本格普及が始まり、30年には年間6000万台の規模まで拡大する(特集の第1回参照)――。急速な成長が期待される電動油圧ブレーキ(電動ブレーキ)市場で勢いをつけているのがドイツのメガサプライヤーだ。小型化や低コスト化に向く「オンデマンド式」の製品を矢継ぎ早に投入し、実用化で先行してきたトヨタ自動車系のアドヴィックスを猛追し始めた。

 トヨタ自動車の「ヤリス」やSUBARU(スバル)の「レヴォーグ」など、新型の量販車の受注を順調に重ねているのがドイツBosch(ボッシュ)だ(図1)。既存の大手自動車メーカーだけでなく、米Tesla(テスラ)の電気自動車(EV)にも広く採用されており、ブレーキの電動化時代に向けて勢いをつける。

図1 トヨタ自動車の小型車ヤリス
図1 トヨタ自動車の小型車ヤリス
欧州市場向けのハイブリッド車には、ボッシュの電動油圧ブレーキが採用された。(出所:トヨタ自動車)
[画像のクリックで拡大表示]

 「年率20%の勢いで成長していくだろう」。明るい市場見通しを語るのは、ボッシュの日本法人で電動油圧ブレーキ事業を担当する吐合求氏(同社シャシーシステムコントロール事業部iBoosterシステム開発担当アクティブセーフティ部門NBS担当ゼネラル・マネージャー)である。

 ボッシュは13年に電動油圧ブレーキ市場に参入した。ブレーキ事業を手掛けるドイツのメガサプライヤー3社の中で先陣を切った格好だ。その後、16年にドイツContinental(コンチネンタル)が、18年には同ZFが電動油圧ブレーキを投入。30年には年間6000万個の規模に膨らむブレーキ市場を狙って動き出した。

トヨタ系の方式より少ない部品点数

 ドイツの3社に共通するのが、電動油圧ブレーキの方式としてオンデマンド式を採用している点だ。これは、内蔵するモーターでブレーキのマスターシリンダーを押し、油圧を制御するもの。ドイツ勢に先行して電動油圧ブレーキを展開してきたトヨタ自動車系のアドヴィックスが得意とする「アキュムレーター式」に比べて、部品点数を減らしやすい利点がある。

 オンデマンド式には、「1ボックス型」と「2ボックス型」がある。前者はマスターシリンダーとブースター、油圧制御回路など主要部品をすべて一体化したもの。部品点数や質量などを減らしやすい。

 1ボックス型の電動油圧ブレーキの質量は6kgほどで、負圧ブースターを使う従来のブレーキシステムに比べて3~4kg軽い。体積も小さくなるが、すべての部品が一体化しているため、部品を搭載するスペースを確保するのが難しいという課題もある。

 2ボックス型は、ブースターを負圧式から電動式に置き換えたもので、ESC(横滑り防止装置)など油圧を制御する機構は分けて搭載する。従来のブレーキシステムから設計変更が少なく、ESCも共用できる。

2種類用意し「好み」に対応

 ドイツ3社で先陣を切ったボッシュは、13年に2ボックス型の「iBooster」を投入した。16年末には第2世代品となる「iBooster2」の量産を始めている。構造を見直すことで、0.7kgの軽量化と生産性の向上を実現した。トヨタのヤリスやスバルのレヴォーグが搭載するのはこの第2世代品だ(図2)。

図2 ボッシュの電動油圧ブレーキ「iBooster2」
図2 ボッシュの電動油圧ブレーキ「iBooster2」
スバル「レヴォーグ」やトヨタ「ヤリス」などに採用されているもの。ESCと組み合わせる2ボックス型のブレーキシステムである。(撮影:日経Automotive)
[画像のクリックで拡大表示]

 ボッシュは1ボックス型の製品「IPB(Integrated Power Brake)」も用意する(図3)。18年に量産を始めた。2つの方式の製品をラインアップするのは、「自動車メーカーによって好みが違う」(同社の吐合氏)ことに対応するためだ。

図3 1ボックス型の電動油圧ブレーキ「IPB」
図3 1ボックス型の電動油圧ブレーキ「IPB」
ボッシュが2018年に量産を開始した。(出所:ボッシュ)
[画像のクリックで拡大表示]