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 新型コロナウイルス感染症拡大で大きなダメージを受けた2020年の工作機械業界。回復が期待されていた市況がさらに落ち込み、2年に1度開催されてきた日本最大の国際工作機械見本市「JIMTOF」もオンライン開催となった。しかし、その陰で各社は着々とコロナ後を見据えた準備を進めている。

 ジェイテクトはAI(人工知能)など知能化技術を使って強みである生産性に磨きを掛けるほか、独自のスカイビングセンターを前面に推しだして差異化を図ろうとしている。工作機械事業を率いる加藤伸仁氏に、コロナ禍でのビジネスの変化や今後の戦略を聞いた。(聞き手は吉田 勝)

 新型コロナの影響で受注は3~4割ほど減りました。建設機械やインフラ系など、一部の需要が戻り始めたところもありますが、ジェイテクトの工作機械事業の顧客は自動車やその関連などの大手メーカーが多い。こうした顧客は投資を見合わせる状況がまだ続いています。2021年に入っても続くとみています。一方で製品開発や技術開発は計画通り粛々と進めています。新製品の投入などもほぼ予定通り進めます。

加藤伸仁 ジェイテクト 専務取締役 工作機械・メカトロ事業本部 本部長
加藤伸仁 ジェイテクト 専務取締役 工作機械・メカトロ事業本部 本部長
かとう・しんじ 2010年7月トヨタ自動車メカトロシステム部長に就任。17年1月にジェイテクトの理事、同年4月同執行役員に就任。常務取締役を経て20年6月から現職。(写真:上野 英和)
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商談に3Dモデルやシミュレーション、デジタル活用の裾野広がる

 コロナ禍による受注減という問題はありますが、仕事のやり方が変わったというか、変わらざるをえなかった点でメリットもありました。

 新型コロナ以前から当社はデジタルツインやシミュレーションと、リアルの機械をどう結びつけるかという取り組みを進めていました。3D設計やシミュレーションといったデジタルツールの活用で当社は少し遅れていたという認識がありキャッチアップしようと考えていました。

 例えば従来は設計データとは別にシミュレーション用の3Dモデルを作っていました。設計の3D化もかねて進めてはいましたが、専用機を強みにしているという当社の商品特性もあり、なかなか全面展開できていなかった。そのためシミュレーションの実施のためには別途データが必要だったのです。

 今は設計自体をほとんど3D化しており、その課題は解消しました。設計データを使ってシミュレーションできる環境が整ったわけです。営業担当者も3Dツールを使って顧客に説明するなど、設計者だけでなくみんなが3Dツールを使うようになってきています。単にオンライン会議で商談するのではなく、3Dモデルやシミュレーション結果を使って一歩踏み込んだ情報を提示するなど、デジタルデータを駆使しながらオンライン商談を進める取り組みが加速しました。

 技術営業の担当者が顧客と打ち合わせする際も従来はもっぱら紙ベースの資料を使っていました。3Dモデルやシミュレーション結果なら、実物の工作機械では見られない機械の内部や主軸の中身、チャックやツーリングを画像で確認できます。できるところは3Dデータなどを使って机上で検証・確認し、リアルの実機で見るのは最後だけにする。これは顧客からも非常に好評です。最初から実物でテストしようとするとワークや工具、治具を準備するなど、顧客も我々も手間と時間がかかりますが、3Dツールならすぐできます。