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 新型コロナウイルス感染症拡大で大きなダメージを受けた2020年の工作機械業界。回復が期待されていた市況がさらに落ち込み、2年に1度開催されてきた日本最大の国際工作機械見本市「JIMTOF」もオンライン開催となった。しかし、その陰で各社は着々とコロナ後を見据えた準備を進めている。

 牧野フライス製作所は、JIMTOFに合わせて新しいコンセプトマシン「e・MACHINE」を発表。従来の同社製品とは一線を画する進化する工作機械がテーマだ。その他、自社ブランドのレーザー加工機など次々と意欲的な製品を投入しようとしている。開発本部本部長の土屋雄一郎氏に、コロナ禍でのビジネスの変化や今後の戦略を聞いた。(聞き手は吉田 勝、高市清治=日経クロステック/日経ものづくり、構成は小林由美=製造系ライター)

 新型コロナウイルス感染症拡大では、牧野フライス製作所のビジネスも大きな影響を受けました。特に、これまで当社の売り上げの3割を占めていた航空機関連がほとんどゼロになる勢いです。

土屋 雄一郎 牧野フライス製作所 執行役員開発本部本部長
土屋 雄一郎 牧野フライス製作所 執行役員開発本部本部長
つちや・ゆういちろう 2015年に勝山P1開発部ゼネラルマネージャ、16年に取締役 開発本部 副本部長、17年にS.I.T本部本部長、18年に執行役員 S.I.T本部本部長に就任。19年7月に執行役員 MDS推進室室長。20年6月から現職。(写真:加藤 康)
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 当社の売り上げは2018年度にピークを迎えていて、業界の動向そのまま19年度に入ってから徐々に落ち込んでいました。今回のコロナ禍で国内外の景気が大きく悪化し、19年度の終わりごろから20年の春までに出荷台数はかなり減少しました。こうした状況は当社だけではなく、工作機械業界全体にいえると思います。

 当社でもコロナ禍を機にリモートワークを導入し、徐々に浸透しています。営業スタッフはこれまで、顧客との対面で製品を売るフィジカルな要素が大きかった。ビジネス面でのIT化については工作機械業界の中でも少々遅れていると感じていました。課題を認識し、ちょうどメールシステムの刷新やクラウドサービスの整備を始めていた時期だったため、急速なリモートワーク導入が意外とすんなり進んだ面はあります。

世の中に合わせてビジネスを革新

 当社では、数年前から「これからの機械メーカーとしてあるべき姿」を探ってきました。インダストリー4.0やIoT(Internet of Things)、デジタルツインなど、機械メーカーにおけるIT戦略に関するトレンドもずっと調査を続け、意識しています。かつてと比べれば、顧客の要求も大きく変化しています。その要求の変化にどう適応していくべきかを社内で検討していた矢先に、コロナ禍に見舞われました。

(写真:加藤 康)
(写真:加藤 康)
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 インダストリー4.0やIoTは数年前からさかんに唱えられていました。ただ、工作機械業界としてはあまり切迫感がなかったり、やや腰が重かったりという面があったと思います。しかしコロナ禍に見舞われた20年4月以降は当社も含めて業界全体が「何かやらねば」という感じになってきているのを感じます。