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 2021年はITインフラ技術のトレンドがどのように変化するのだろうか。日経クロステックは5人の有識者を招き「ITインフラテクノロジーAWARD 2021」を選出した。5人による審査会で議論した内容から、2021年に注目すべきITインフラ技術を示す。グランプリの「ゼロトラストネットワーク」に続く第2位に選出したのは、米Apple(アップル)がMac用に開発したシステム・オン・チップ(SoC)の「M1」である。PC業界のゲームチェンジャーとなる可能性を評価した。

 システム・オン・チップは1枚の基板上にCPUコアやメモリーなどコンピューターの動作に必要な機能を実装した集積回路である。M1はCPUとして4つの高性能コアと4つの高効率コアの計8コアを搭載する。他にメモリーやGPU、機械学習用のニューラルエンジンなども搭載している。Appleによれば、M1の消費電力1ワット当たりのCPU性能は世界最高だという。

米Appleが開発したM1チップ
米Appleが開発したM1チップ
(出所:米Apple)
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垂直統合を進めるAppleの新CPU

 野村総合研究所(NRI)の石田裕三産業ITグローバル事業推進部 上級アプリケーションエンジニアはM1の登場で「垂直統合への揺り戻しが発生する可能性もある」と指摘する。ここでいう垂直統合とは、CPUやGPU、OS、アプリケーションなどを1社で提供する体制を指す。垂直統合のメリットは開発・生産のプロセスを自社でコントロールできる点にある。OSや起動するアプリケーションに適したハードウエアを開発しやすくなる。

 Macは2006年から米Intel(インテル)製のCPUを搭載してきた。それ以前はAppleや米IBMなどが共同開発するPowerPC系のCPUを搭載していた。M1によってAppleが再びOSとCPUを開発する垂直統合の体制に戻ったわけだ。

 国立情報学研究所の佐藤一郎情報社会相関研究系教授は「Appleの競合他社が追従して垂直統合を進めるとPC業界は変動する」と話す。現在のPC業界は水平分業が進んでいる。PCにはIntelや米Advanced Micro Devices(AMD)などの半導体メーカーが開発したCPUを搭載し、稼働するOSは米Microsoft(マイクロソフト)のWindowsが主流だ。

 仮にMicrosoftが垂直統合を進めるならば、Windowsに特化したチップを半導体メーカーと共同開発するだろう。そしてMicrosoft製チップを搭載したPCを市場に投入する。他の半導体メーカーやマザーボードメーカー、PCベンダーなどに大きな影響を及ぼす可能性がある。