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 情報処理推進機構(IPA)のサイバー技術研究室は2021年春にも、複数の自治体職員がサービスを共同開発したり情報を共有したりする環境をLGWAN(総合行政ネットワーク)上のASPサービスとして提供する計画だ。自治体職員の中にいるデジタル人材が自由にサービスを開発したり活用したりするのを後押しする。

自治体職員1%は「コンピューターマニア」

 LGWANとは、セキュリティーに配慮した自治体向けの閉域網で地方公共団体情報システム機構(J-LIS)が管理している。国と自治体をつなぐほか、自治体職員の業務システムでも使われている。今回IPAが提供予定のサービスはあたかもソースコード共有プラットフォーム「GitHub」のように、自治体職員がつくったプログラムをLGWAN接続下で共有できるリポジトリーである。職員が作成したWebアプリケーションを動作させるクラウド型Webサーバーも試作する。

 開発を進めるのは「天才プログラマー」でもあるIPAの登大遊産業サイバーセキュリティセンターサイバー技術研究室室長。登室長は、自治体職員がLGWANを使ったテレワークをするためのシンクライアント型VPN(仮想施設網ソフト)「自治体テレワークシステム for LGWAN」やそのベースとなる「シン・テレワークシステム」の開発を主導したことでも知られる。

 登室長は自治体テレワークシステム for LGWANの開発を進めるなかで「自治体職員の100人に1人くらいは(自身でサービスを開発したりサーバーを立てたりできる)『コンピューターマニア』がいる」と気付いた。ところが、自治体職員が日常業務で使うLGWANは、自作したプログラムを他の自治体職員と気軽に共有する仕組みをつくったり、他の自治体と共用するサーバーを設置したりできない。そこで、IPAがリポジトリーやクラウド型Webサーバーの提供元となる構想を立てたという。

LGWAN接続系でサービス開発促す

 自治体が外部接続するネットワークはセキュリティー上3グループに分かれる。まずLGWANにつながるのが2つで、マイナンバーを使う事務処理端末のグループである「マイナンバー利用事務系」と、主にメール送受信やグループウエアの利用といった通常業務で使う端末のグループ「LGWAN接続系」だ。

自治体ネットワークはセキュリティー上3グループに分かれる
自治体ネットワークはセキュリティー上3グループに分かれる
(出所:地方公共団体情報システム機構)
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 残りの1つが「自治体情報セキュリティクラウド」と呼ぶセキュリティー基盤を介してインターネットにつながり、Webサイトの閲覧などに用いる端末のグループである「インターネット接続系」である。3グループに分かれたきっかけは2015年に判明した日本年金機構の個人情報流出事案だ。総務省は2015~2016年度に自治体の外部接続ネットワークを上記の3つに分離するセキュリティー強じん性向上対策を進めた。

 セキュリティーは高まったが、行政のデジタルトランスフォーメーション(DX)が加速する現時点においては使い勝手などに問題がある。そこで新サービスの提供で「自治体のIT部門やデジタル人材がLGWAN接続系で使うサービスを実験的に開発したり活用したりできるようになる」と登室長はみている。