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 自治体の間に独自にITを駆使して事務処理を改革したり新たなサービスを始めたりする創意工夫が広がっている。政府は自治体職員と直接対話して、自治体システムのあるべき姿をつくる方針を掲げた。

「書かない窓口」の背後にある不断の改善活動

 他の自治体から毎週のように事務処理の改善方法について問い合わせが来る自治体がある。オホーツク海沿岸を西端に東西約110キロメートルに広がる北海道北見市だ。全国に先駆けて市民が申請書を書かずに行政手続きできる「書かない窓口」を実現した自治体として知られる。

 北見市の窓口職員は訪れた市民から必要事項を聞き取ると、独自に開発した窓口受付システムを使って申請書を作成する。市民は職員に渡された書類の内容を確認して署名するだけで手続きが完了する。

 北見市の「書かない窓口」は同市が取り組んできた利便性向上や事務処理の改革の一端にすぎない。多くの部署が実務を整理し、窓口業務の背後にある事務処理を大幅に効率化している。

 発端は2011年の現場の発案だった。複数の部署にまたがる事務処理の手順や確認事項をまとめたチェックシートなどのツールを作り、事務処理の標準化を進めた。複数の申請書を1枚にまとめて申請できるようにしたほか、市民が複数の窓口に行かなくても済むように地道な改善に今も取り組んでいる。単にシステムを導入しただけではない。

「書かない窓口」を生み出した北見市の事務改革の例
「書かない窓口」を生み出した北見市の事務改革の例
(出所:北見市)
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 当初から改革プロジェクトに関わる北見市の及川慎太郎総務部総務課総務係長は「キーマンとなる係長職らが旗を振って連携しながら、過去につくったツールを若い職員や多数の部署が流⽤してくれている」と話す。プロジェクトはトップダウンやボトムアップでも情報システム部門だけが担っているわけでもなく、様々な部署に複数のキーマンがいるという。

 複数のキーマンが協力する態勢ができたのは、現場の職員が継続的に改善提案を出し合っているためだ。ひとたび改善した後も、さらに改善したい点が次々と出てくる。「現状の改善策にとどまらず、その次を考えてほしいと必ず話している」(及川係長)。現場の創意工夫を引き出して協力するという考え方が根付いているわけだ。

 現場の創意工夫は他の自治体にも広がっている。「書かない窓口」は北見市と連携してデジタル化を進めている埼玉県深谷市なども取り組み始めた。深谷市はオンラインで手続きできるようにデジタル化とデータ連携を進めており、将来は「窓口に行かなくてよい」市役所を目指すという。

 現場の職員が部署や自治体の枠を超えて互いに創意工夫して知恵を共有する動きが急速に広まっている。自治体の間でチャットやテレワークといったツールがそろった。

 さらに情報処理推進機構(IPA)は2021年春にもLGWAN(総合行政ネットワーク)上で、ソースコード共有プラットフォーム「GitHub」のように自治体がソースコードを共有したり米Amazon Web Services(アマゾン・ウェブ・サービス、AWS)のように仮想サーバーを構築したりできるようにするASPサービスを提供する計画だ。自治体のデジタル人材が自由にサービスを開発したり共有したりする動きが加速しそうだ。