大量の水素の利用が始まると、次に問われるのは、その水素はどのように作られるか、そして十分な量を確保できるのか、だ。世界では水素の生産の際にCO2を排出するかどうかによって「色」を付けて呼ぶようになってきた(図8)。
具体的には、水素を生産する際に多くのCO2排出を伴う場合は「グレー水素」、ただしそのCO2を大部分回収して貯蔵などをする場合は「ブルー水素」。そして、CO2を当初からほとんど出さない方法、例えば再エネで水を電気分解(水電解)して水素を発生させる場合は「グリーン水素」と呼ばれる注4)。まだ技術の実用性は明らかになっていないが、天然ガスの改質でCO2を出さない方法も登場してきた(本記事の最終ページ「CO2フリーの天然ガス改質技術が実用化?」参照)。三菱重工業は「ターコイズ水素」と呼ぶ。
仮に火力発電所で使う大量の水素がグレー水素であれば、発電所でCO2が出なくても実質的には大量のCO2を排出していることになる。それでも、ある国内のエネルギー大手は当初は水素社会実現の起爆剤および促進剤としてグレー水素の利用もやむなしとみる。「まずは水素を流通システムに載せることが重要。その後、ブルー水素を増やすが、最終的にはすべてグリーン水素になる」(同社)とみる。
ちなみに現在、日本で使われている水素は約135万トン前後とみられる注5)。苛性ソーダ(NaOH)生産時に得られる水素以外の発生プロセスではCO2を排出するとみられるため、多くがグレー水素ということになる。
水素の量の確保のために経産省傘下の新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)がオーストラリアの褐炭の改質で生産しようとしている水素も当初はグレー水素だ。NEDOはCO2の回収によってブルー水素にする計画だというが、実証実験ではまだコストがかなり高い。目標のコストにできるのは2022年以降になりそうだ。