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世界ではグリーン水素が主流か

 実際、世界ではグリーン水素の製造計画が目白押しで、FH2Rの天下は2020年内で終わりそうだ(表1)。100M~800MWという規模の計画もある。

表1 日本と欧米の最近から数年先までのグリーン水素の製造プロジェクト(日経クロステック調べ)
表1 日本と欧米の最近から数年先までのグリーン水素の製造プロジェクト(日経クロステック調べ)
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 フランスやドイツ、イギリスなど欧州各国は国家戦略としてそれぞれ2030年までに数GW規模でグリーン水素を製造することを決めている(図11)。さらには2020年7月、欧州EUは2025年までに6GWの水電解装置で累計100万トン、2030年末までに40GWの装置で同1000万トンのグリーン水素を製造することを発表した。

図11 欧州はいきなり100万トン単位のグリーン水素を生産へ
図11 欧州はいきなり100万トン単位のグリーン水素を生産へ
EUやその各国、およびイギリスによるグリーン水素生産計画を示した。EUは2024年末までに計6GW級の水電解装置を導入。さらに、2030年末までに計40GWの水電解装置を導入する。(図:EUと各国の水素戦略の資料を基に日経クロステックが作成)
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 これも燃料電池車向けに限らず、火力発電での混焼や専焼を主力用途としていると考えらえる。

オーストラリアは“油田”地帯に

 地理的、気候的に再エネ資源に恵まれたオーストラリアの鼻息はさらに荒い。同国は2019年11月に政府としての水素戦略を発表し、2030年までに5GW規模のグリーン水素製造を政府目標とした。同国のチーフサイエンティストであるAlan Finkel氏は2019年12月に「現在我々は雇用と輸出先とエネルギー貯蔵庫、およびCO2削減をもたらしてくれる新産業の日が昇る間際にいる」と声明を発表するなど、グリーン水素事業をかつての油田産業のように位置付ける。輸出先とは日本などアジア諸国で、グリーン水素などを売り込む考えだ。

 民間ではさらに大規模なグリーン水素の事業計画が幾つも進んでおり、再エネ26GWでグリーン水素やそのアンモニア版である「グリーンアンモニア」などを製造する計画も急ピッチで進んでいる(図12)。

図12 オーストラリアではグリーン水素の量産計画が目白押し
図12 オーストラリアではグリーン水素の量産計画が目白押し
オーストラリアにおける、主に民間のグリーン水素量産計画を示した。Asian Renewable Energy Hub(AREH)は最大26GWの再エネを導入し、グリーン水素やグリーンアンモニアを生産する。西オーストラリア州政府も後押ししている。アンモニアを生産する計画が多く、またそれらの輸出先として、日本などアジア諸国を想定している計画が多いのが特徴だ。(図:日経クロステック)
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グリーン水素のコストが急降下

 これまで、グリーン水素には前のめりな見方とは別に冷めた見方もあった。それは、グリーン水素のコストを懸念する見方だ。グリーン水素はほんの3年ほど前までは10米ドル(約1000円超)/kg以上で、米国での天然ガスの価格の5~10倍と割高だった。大量の水素確保はまずは安い褐炭の改質で、というNEDOの方針もこうした背景から立てられたようだ。

 ところが、2年ほど前からグリーン水素の製造コストは急速に下がり始めた(図13)。2018年には8米ドル/kg、2019年には5米ドル/kgと低下。2030年には2米ドル/kg前後にまで下がるという予測も出てきた。これは、NEDOが2030年に褐炭の改質で実現を目指す「30円/Nm3(約3米ドル/kg)」というブルー水素の価格をグリーン水素が下回ってしまう。2050年には1米ドル前後/kg(10円/Nm3)になる見通しで、天然ガスの最安値に並ぶ。

(a)水電解装置の価格急落でグリーン水素も急速に低コストに
(a)水電解装置の価格急落でグリーン水素も急速に低コストに
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(b)大きく3つの点で単価が下落
(b)大きく3つの点で単価が下落
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図13 グリーン水素は2030年ごろにブルー水素より安くなる?
グリーン水素とブルー水素または天然ガス自体との単価を比較した(a)。2017年ごろまでグリーン水素の単価は10米ドル/kg以上とみられていたが、米BloombergNEFの調査では、2018年には8米ドル/kgを割り込み、2019年には5米ドル/kgを割る見通しになった。さらに2030年には3米ドル/kgを下回り、2050年には1米ドル/kg前後になるとする。BloombergNEFはこの下落の主要因は水電解装置の価格が暴落していることにあるという。実際、水電解装置は2018年までは700米ドル/kW台だったが2019年には日経クロステック調べで450米ドル/kW、2020年には350米ドル/kWと大幅に下がっている。2030年には135米ドル/kWにまで下がる見通しだ。グリーン水素の単価は同装置の価格以外にも下がる要因が複数あり、(a)の予測よりもさらに安くなる可能性がある(b)。(図:(a)はBloombergNEF,“Hydrogen Economy Outlook,Key messages,March 30,2020.のデータを基に日経クロステックが作成。(b)は日経クロステック)