「革新電池」の一角だったリチウム硫黄(Li-S)2次電池が早ければ2021年にも実用化される。低コストと高エネルギー密度を両立できる可能性が高い。一方、課題山積だったフッ化物(F)イオン2次電池でブレークスルーとなる新材料が見つかった。30年間電池の主役を張ってきたLiイオン2次電池(LIB)の後継候補が、続々と名乗りをあげている。
エネルギー密度が現行のLiイオン2次電池(LIB)を大きく上回る次世代電池で量産が間近になってきた技術がある(図1)。リチウム硫黄(Li-S)2次電池、そしてフッ化物(F)イオン2次電池である。
エネルギー密度が高いだけではない。Li-S2次電池は、硫黄(S)という、ニッケル(Ni)やコバルト(Co)を用いる現行LIBの正極に比べて事実上タダに等しい正極活物質材料を使うため、大幅に低コストにできる(図2)。Sは石油精製の「脱硫」という工程で大量に出てくる副生成物で、処理に困っているのが現状。日本では10円/kg以下で流通している。安さと高エネルギー密度を両立するLi-S2次電池はポストLIBの代表格だ。
現行LIBは最初の登場からほぼ30年とちょうど1世代分、電池として主役の座に君臨した。Li-S2次電池は、これを引き継ぎ、その全固体版も含めれば、2050年までの向こう30年間の電池技術の主軸になる可能性がある。
Li-S電池はまもなく製品化
サイクル寿命の課題は未解決
Li-S2次電池の製品は早ければ2021年にも登場する。一番乗りのメーカーはLi-S2次電池に特化した英国のベンチャー企業、OXIS Energyになる見通しだ(図3)。
定格電圧2.1V、電流容量15Ahと19Ahのセルをサンプル出荷中である注1)。カタログ上は10~35Ahのセルもある。セルの重量エネルギー密度は2020年1月時点で471Wh/kgで、500Wh/kgの実現を視野に入れる。現在は「まだ手作業での生産のためサンプル価格は高い」(同社)が、量産は間近だ。年間500万セル、計220MWh以上の生産能力を持つ製造プラントを2023年の稼働を目指してブラジルに建設中。加えて、英国のウェールズ地方で電解液と負極の製造プラントを建設している。
日本市場への拡販も検討中である。同社は2019年11月、三洋貿易とLi-S2次電池の販売に関する業務提携を結んだ。