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 パイプラインやガス管は非圧縮または低圧の水素を輸送・供給できるほぼ唯一の手段である。

 国内で取り組みが早かったのは北九州市だ。同市は2009年度と早い時期に経済産業省の助成の下、「北九州水素タウンプロジェクト」を掲げ、約1.2km長の水素用パイプラインを埋設して水素供給実験を実施してきた。

 東京都は、東京五輪後、選手村向けに建設したマンションを転用して「晴海FLAG」という住宅街をつくる計画。そのマンションの共用部に設置する燃料電池に水素パイプラインで水素を供給する(図3)。既に第1期工事は完了し、計画の7割のパイプラインを埋設した。

図3 五輪後の街でパイプライン経由の水素供給へ
図3 五輪後の街でパイプライン経由の水素供給へ
東京五輪の選手村予定地に計画されている街「晴海FLAG」の水素パイプラインの敷設ライン(a)。マンションなどの共用部に設置する純水素燃料電池5台に水素を供給する。第1期工事(2018年3月~2019年12月)で全体の7割を敷設した(b)。配管は直径150mmで約1mの深さに設置する(c)。(図と写真:(a)は三井不動産レジデンシャルの晴海FLAGのWebより引用、(b、c)は東京ガス)
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 水素にはいわゆる脆化(ぜいか)という、金属材料を弱体化させる性質があることから水素パイプラインには特殊な材料が必要で、都市ガス用配管をそれらに刷新するコストは膨大になる、という見方がある。

 しかし、東京ガスが晴海FLAGに敷設したガス管は一般の都市ガス用配管と同じだという。「脆化が問題になるのは高圧の場合。過去の技術調査で、1MPa(10気圧)以下の中低圧であれば脆化は認められなかった。適切な維持管理をすれば、ガス管と同様に半永久的に使えると考えている」(東京ガス)注3)

注3)ただし、すべてではない。東京ガスによれば、既存の都市ガス用配管の中には脆化に特に弱い材料からなるガス管や水素への転用に向かない敷設工事をしている例が一部にあり、現場ごとに調査しなければならないのだという。

 天然ガスのパイプライン網が発達した欧州でも、一部地域で水素を天然ガスに一定割合混ぜた形での供給を始めている。