東京工業大学 栄誉教授の細野秀雄氏が開発したHB法向け新触媒にも企業の投資が相次いだ(図13)。細野氏が開発した“金属性セメント”ともいえる材料「C12A7:e-」は、Ruと組み合わせることでHB法の温度をこれまでより100℃低い300℃以下、圧力は30~50気圧と従来の1/5~1/3に低減するという。この触媒に注目した味の素は、東京工業大学と共同で2017年4月にベンチャー企業つばめBHB†を設立。さらに2020年10月、三菱ケミカルなども出資した。
三菱ケミカルは同社の独自技術であるゼオライト膜をつばめBHBのHB法に組み合わせることで、これまで低かったHB法の生産効率を大きく高められるとする(図13(b))。三菱ケミカルはこの技術に基づくNH3の合成事業を2025年ごろに始める計画だ。「細野先生や東京工業大学はその後も高効率なNH3合成技術を相次いで開発している。そうした最新技術を順次取り入れていきたい」(同社)。
NH3合成の設備が大幅に簡素に
つばめBHBの狙いの1つは、アンモニア合成の「オンサイト化」だ(図14)。HB法の温度や圧力が下がればより小型のプラントでもNH3を合成できるようになる。これにグリーン水素を生産する水電解装置を組み合わせれば、従来のような大掛かりな水素貯蔵施設が不要になる。もともとHB法は原料の1つの窒素を空気中から得る技術であるため、材料の外部からの調達が不要になる。
つばめBHBは、再エネの資源の豊富なところ、あるいはNH3の需要のあるところでNH3を合成することで、NH3合成設備の生産能力に対する単価を1/4~1/3に低減可能とみる。