“炭素の灰”であるCO2を有機材料に変える技術は人工光合成と呼ばれているが、効率が低く実現は2050年ごろと見込まれていた。東芝はそれを既に実用化可能な水準にした。CO2を工業的に有用な一酸化炭素(CO)に変えることで、有機材料や合成燃料を容易に生産できるようになる。全日空などと共同で2025年にも航空機用ジェット燃料を量産する計画だ。
二酸化炭素(CO2)の資源化技術としては第1部で紹介したように、CO2を合成メタン(CH4)に変えるメタネーション技術の開発が進んでいる。非常に有用な技術ながら、実用化には、グリーン水素以上に厳しい価格競争が待っている。天然ガスのCH4との“CH4同士の対決”になるからだ。この競争にメドが立つのは、やや楽観的なシナリオでもグリーン水素の単位質量当たりの価格が天然ガスに並ぶ2050年ごろになるかもしれない(第1部図13参照)。
これには原理的な理由がある。CO2を基にCH4を1mol(モル)合成するには、水素(H2)を4mol必要とするからだ(図1)。もったいないことに、この反応では2mol分のH2を水として捨ててしまうのである。
結果、CO2の調達コストがゼロだったとしても、単位質量当たりでは材料費(水素代)だけでグリーン水素の価格の1/2のコストがかかってしまう。実際には設備の償却費など諸費用が加わるため、この合成メタンを単位質量当たりでグリーン水素と同程度以下の価格にするのは容易ではない。グリーン水素自体は単位質量当たりの価格がCH4の2倍超でも燃料として競争力があるが、CH4同士の対決では勝負にならない注1)。