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会津若松市の都市OSを横展開

 スマートシティーやスーパーシティを支えるデジタル基盤は都市OSとも呼ばれる。IoT(インターネット・オブ・シングズ)などのデータを収集・分析したり、都市内部や都市間でサービスやデータを連携させたりする。

 会津若松市を例に都市OSの実像を見てみよう。「会津若松市の都市OSの構築にメドが立ったので、他の4都市にも展開しているところだ」。アクセンチュアが会津若松市に設けたイノベーションセンター福島で共同統括を務める中村彰二朗氏はこう話す。同社は会津若松市や会津大学などとともに、都市OSの構築に携わってきた。奈良県橿原市には既に導入済みで、千葉県市原市、宮崎県都農町、沖縄県浦添市に2021年春に導入予定だ。

 会津若松市の都市OSの入り口となるのがポータルサイト「会津若松+(プラス)」だ。市内の公立幼稚園や小学校、中学校などの情報を保護者に発信する「あいづっこ+」や、除雪車の走行状況を地図上で表示する「除雪車ナビ」などのサービスを展開する。

 会津若松市の人口は約12万人だが、会津若松+には約14万人の年間ユニークユーザーがいる。さらにID登録が必要なサービスも用意。利用者からオプトインで同意をとったうえで個人情報を得ており、ID登録者は1万1000人を超える。住民はパーソナライズされた情報を得られる。個人情報管理も含めた事業運営・実施は市内の企業や病院などが設立した「一般社団法人スマートシティ会津」が担う。

 「スマートシティーを構築するうえでは、市民一人ひとりにパーソナライズしたより良いサービスの提供が欠かせない。そのためには個人情報を一企業ではなく公的な存在に近い組織が管理することが重要だ」(中村氏)。

 災害時の情報提供サービス「マイ ハザード」の開発もそうした取り組みの一環だ。スマートフォンの位置情報を災害時に取得することについて事前に同意を取っておき、同意が取れた人には災害発生時にスマホのGPS(全地球測位システム)と地域のハザードマップを連動させて避難誘導や家族の安否確認をできるようにする。2021年2月にテスト稼働を予定する。

 スマートシティーにおける個人情報の取り扱いを巡る問題は既に海外で顕在化している。カナダのトロント市では、米アルファベット傘下の米サイドウォーク・ラボが個人情報の収集をめぐって近隣住民から激しい反発を受け、スマートシティー事業を断念した。

 それでもアクセンチュアが2020年3月に発表した世界11カ国約6500人を対象とした調査では「よりパーソナライズされた公共サービスが得られるならば行政機関に対して個人情報を共有しても構わない」と答える回答者が世界で84%、日本で79%を占めた。

 「スーパーシティやスマートシティーの役割は、個人情報を共有し、当事者として街づくりに参加することが、地域の役に立ち、自分のためにもなるという市民のマインドチェンジを促すことだ。そうした意識が広がれば日本全体のデジタル化も成功するだろう」と中村氏は語る。