全1088文字
PR

 公共交通機関など移動に関わるあらゆるサービスをITで組み合わせて利便性を高めるMaaS(モビリティー・アズ・ア・サービス、マース)。日本では2018年ごろから本格化したMaaSは2020年、新型コロナ禍で移動需要自体が減退し、停滞を余儀なくされた。需要の急回復が見込めぬ中、移動以外のサービスも取り込むなど方向転換して巻き返す動きが2021年に始まる。

表 国内の主なMaaSの取り組み
鉄道会社やトヨタ自動車などが参入
表 国内の主なMaaSの取り組み
[画像のクリックで拡大表示]

 日本におけるMaaSの代表例は、小田急電鉄の「EMot(エモット)」だ。スマートフォンで目的地を入力すると経路を検索できる。鉄道・バスだけではなく、提携先のドコモ・バイクシェアの自転車シェアも含めた多様な移動手段を提案する。

EMotの画面。バイクシェアや鉄道・バスを組み合わせた最適経路を示す
EMotの画面。バイクシェアや鉄道・バスを組み合わせた最適経路を示す
[画像のクリックで拡大表示]

 一部のサービスについてはその場でチケットを予約・購入して、電子チケット画面を係員に見せるなどすれば利用できる。トヨタ自動車が福岡県や横浜市などで展開する「my route(マイルート)」や、東急とJR東日本が静岡県で展開する「Izuko(イズコ)」なども基本的な機能は同じだ。

 東急の森田創MaaS戦略担当課長は「MaaSは公共交通活性化の切り札だが、各社ともコロナで体力が弱っている。政府も近年熱心にMaaSの旗振りをしてきたが、当面は公共交通の財政支援に傾注せざるを得ない。業界全体ではMaaSの取り組みが停滞しそうな情勢だ」と冷静に話す。

 東急を含む大手私鉄15社の2020年4~9月期決算は最終損益が全社とも赤字だった。テレワークの定着や、他人同士が密になりがちな公共交通が敬遠されてマイカーにシフトしたなどの要因が考えられる。「厳しい経営環境でMaaSへの投資を縮小する企業も出る。だが東急は苦境を脱するツールとしてMaaSを使いたい」(森田課長)。