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 カーボンニュートラル時代に、製造業でさらに加速しそうなのが「軽量化」だ。対象は、クルマや飛行機、電車、ロボットなど、主に移動や動きを伴う製品。軽くなるほど、より少ないエネルギーで使用でき、その分、温暖化ガスである二酸化炭素(CO2)の排出量を削減できるからだ。

 軽量化は製造業の普遍的な課題だが、日本国内のCO2排出量を2050年までに実質的にゼロとする極めて厳しい目標に少しでも近づくには、従来の延長線上の方法では限界がある。そこで注目されているキーワードが「マルチマテリアル」だ。

 マルチマテリアルの文字通りの意味は、異なる種類の材料を使うこと。だが、ものづくりにおける“本質的な意味”は、「適材適所」を考えて軽い材料を使いこなし、革新的な軽量化を実現することである。例えば、クルマであれば高張力鋼板やホットスタンプ材、アルミニウム(Al)合金、マグネシウム(Mg)合金、炭素繊維強化樹脂(CFRP)といった軽量材料を“パッチワーク”のようにつなぎ合わせ、従来よりも大幅に軽いボディーを実現する。

自動車のマルチマテリアルボディーの例
自動車のマルチマテリアルボディーの例
ドイツAudi(アウディ)の「A8」。Al合金に加えて、Mg合金やCFRPといった超軽量材も積極的に使った。(出所:Audi)
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何でもくっつける技術が不可欠

 革新的な軽量化をもたらすマルチマテリアル化を達成した製品を造るために、必要不可欠なのが異なる材料の部品同士をくっつける接合技術である。中でも軽量化に有利なのが、ボルトやリベットなどの機械的な締結要素が要らない「異種材料接合(以下、異材接合)」だ。Al合金と鋼、Al合金とCFRPなど、異なる材料の部品を直接強固にくっつける技術である。

 異材接合は実質的に日本発で、その技術開発で日本が世界をリードしている。金属と樹脂の接合原理としてアンカー効果を見いだした後、デジタル機器で異材接合の実用化がスタートした。こうした実績の中でデータやノウハウの蓄積、課題の抽出、接合原理の解明などが進み、さらにビジネスチャンスが拡大。それが新規参入企業を呼び込み、潜在的なニーズを取り込もうと新技術が続々登場している状況が現在も続いている。

異材接合の進化と拡大するビジネスチャンス
異材接合の進化と拡大するビジネスチャンス
異材接合の技術開発や、データやノウハウの蓄積で日本は世界をリードしている。これを生かせばビジネスチャンスを拡大できる。(出所:日経クロステック)
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* アンカー効果 金属の表面に入り組んだ凹凸形状を設け、アンカー(碇)が海底の凹(くぼ)みに引っかかるように、樹脂が金属側の微細な凹みに入り込んで動かなくなり、強い接合強度を生み出す効果。

実用上の品質を重視した装置が登場

 新しい異材接合技術では、実用化後の使い勝手を高めたものが誕生し始めた。例えば、睦月電機(大阪市)は金属と樹脂を直接接合する装置を開発した。金属に対してレーザーで前処理するユニットと、前処理した金属に樹脂を密着させて熱を加える圧着ユニットを隣り合わせに配置。品質保証の妨げとなる変動要素を極力なくす方針で開発した。2021年後半に発売したいという。

金属と樹脂を直接接合する装置
金属と樹脂を直接接合する装置
睦月電機が開発した。第4回接着・接合EXPO(2020年12月2~4日、幕張メッセ)に出展した。(出所:日経クロステック)
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