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 そのままではかさばる水素ガスの代わりに、水素を別のコンパクトで扱いやすい材料に変換したものは「水素キャリア」と呼ばれます。その有力候補の1つが、アンモニアです。一般にはハーバーボッシュ(HB)法という合成技術を用いて、「水(H2O)と空気(N2)」とエネルギーから作ることができます。このエネルギーに再生可能エネルギーを使えば、製造プロセスを通して二酸化炭素(CO2)フリーの「グリーンアンモニア」と呼べるアンモニアが得られます。

 一方、発生するCO2を回収しながら天然ガス改質で製造した水素(H2)を基に合成したアンモニアはブルーアンモニアと呼ばれます。

当初は水素に戻さず燃料に

 水素キャリアとしてのアンモニアの使い道は大きく2つに分かれます。1つは、触媒の存在下で熱分解によって再び水素に戻し、燃料電池などに利用する使い方。もう1つは、アンモニアのまま、燃料にしてしまう使い方です。水素同様、アンモニアを燃やしてもCO2は発生しないのでCO2フリー燃料といえます。日本における当初の使い方は後者がメインになりそうです。

 燃料目的のブルーアンモニアの日本への輸入は既に2020年秋に始まっています。初回の輸入量は40トンとわずかですが、2021年には急激に増える見通しです。IHIが既にアンモニアの天然ガスタービンなどへの混焼実験を始めているほか、JERAも1GW級の石炭火力発電所で20%までの混焼を開始する計画だからです。

 国内ではこのブルーアンモニアやグリーンアンモニアの利用促進を図る組織「グリーンアンモニアコンソーシアム(GAC)」が2019年4月に発足し、既に100を超える企業や各種機関が参加しています。GACのブルーまたはグリーンのアンモニアの国内への輸入目標は2025年に50万~100万トン。100万トンは、現在の日本の年間アンモニア利用量とほぼ並びます。GACは2030年には300万~500万トンまで輸入量を増やす計画です。アンモニア300万トンは日本の年間発電量のちょうど1%分の燃料に相当する量です。

水素社会よりむしろ「アンモニア社会」?
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水素社会よりむしろ「アンモニア社会」?
エネルギーキャリアとしてのアンモニアの利用手段や用途の例(a)。水素と同様、直接燃焼させてもCO2は排出されずゼロエミッションである。水素でできることのほとんどはアンモニアでもできる。水素に比べて貯蔵や運搬などの取り扱いが容易で、すでに流通システムも整っていることから、「水素社会」よりも「アンモニア社会」が先に来る可能性すらある。(図:日経クロステック)