菅義偉首相は2020年10月26日に開会した臨時国会の所信表明演説で、国内の温暖化ガスの排出を2050年までに「実質ゼロ」とする方針を表明した。いわゆる「2050年カーボンニュートラル宣言」だ。日経クロステックでは同宣言を推進する上で2021年に注目したい先端技術をピックアップ。専門記者が分かりやすく解説する。

先端技術2021:「2050年カーボンニュートラル宣言」の推進力
目次
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水素キャリアで注目のアンモニア、下水・工場排水がその原料に
水素キャリアの有力候補の1つが、アンモニアです。一般にはハーバーボッシュ(HB)法という合成技術を用いて、「水(H2O)と空気(N2)」とエネルギーから作ることができます。このエネルギーに再生可能エネルギーを使えば、製造プロセスを通してCO2フリーの「グリーンアンモニア」と呼べるアンモニアが得られ…
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再生エネの調整役「定置用電池」、安全と性能は両立できる?
日本政府は、2050年のカーボンニュートラルを実現するため、再生可能エネルギーを主力の電源とする方向性を示しています。ただし、これにはセットで考えなければならない技術・設備があります。系統安定用の定置用蓄電池です。
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規制緩和進む「洋上風力発電」、再エネ海域利用法とは?
2020年12月25日、日本政府は「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」(以下、グリーン成長戦略)を発表しました。再生可能エネルギーを2050年の主力の電源と位置づけ、発電量の約50%~60%を再生可能エネルギーで賄うことを見据えながら、今後、議論を深めていくとしています。
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EVだけではCO2は減らない エンジンの高効率化を止めるな
二酸化炭素(CO2)の排出量と吸収量が同じになるカーボンニュートラル(炭素中立)。その実現過程において不可欠なのが、実は熱効率の高いエンジンである。エンジンは、CO2を排出する“悪者”とみられがちだが、熱効率の高いエンジンを使った電動車両は後述するように、発電や車両の製造を含めたライフサイクルで捉…
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EVのCO2実質ゼロ、電池はリサイクル“しない”が近道
電気自動車(EV)をはじめとする電動車両で温暖化ガスの排出を実質ゼロにする上で課題となるのが、リチウムイオン電池の扱いである。EVの生産から廃棄までのライフサイクルで最も二酸化炭素(CO2)が発生するのが、劣化した電池を燃やして希少金属を取り出すリサイクルの段階だからだ。
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炭素中立エンジンの切り札へ 合成燃料e-fuel、日系3社が注力
トヨタ自動車や日産自動車、ホンダはそれぞれ、二酸化炭素と水素の合成液体燃料「e-fuel」の研究に着手した。エネルギー生成段階を含むハイブリッド車のCO2排出量で、電気自動車を下回る水準を目指す。2030年に一層厳しくなる環境規制に備える。
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脱炭素に必須の安全な原発 小型モジュール炉や高温ガス炉に期待
カーボンニュートラルの実現に原子力発電は欠かせない。再生可能エネルギーとして期待される太陽光発電や風力発電は出力が少なく、天候に左右されやすいからだ。その点、原子力は安定電源とされる。注目されるのが、小型モジュール炉(SMR)や高温ガス炉(HTGR)といった新型の原子炉だ。
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脱炭素目指す材料「バイオプラスチック」に誤解も多く
環境に「やさしい」とされるバイオプラスチック。これまで一般に普及してきたプラスチックの長所を受け継ぎ、環境へ悪影響を与えないようにする工夫が進んでいる。
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クルマ脱炭素の切り札「マルチマテリアル」、異材接合で革新
カーボンニュートラル時代に、製造業でさらに加速するのが「軽量化」の実現だ。対象は、クルマや飛行機、電車、飛行機、ロボットなど、主に移動や動きを伴う製品。軽くするほど、より少ないエネルギーで使用でき、その分、温暖化ガスである二酸化炭素(CO2)の排出量を削減できるからだ。