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 次期排ガス規制の中でも、現時点で特に大きな注目を集めているのが、欧州連合(EU)が2025年以降の施行を目指しているとみられる「Euro 7」(仮称)である。21年第4四半期の制定という目標に向けて現在検討中の次期排ガス規制だが、現行の「Euro 6d」と比べて大幅に厳しいものになるとの可能性がささやかれている。あるエンジンの専門家は、もはや従来型のエンジン車では対応が困難になる可能性すらあると吐露する。

 無論、Euro 7は検討途中のものであり、まだ何も決まってはいない。だが、「技術的な観点から考えて現実的にはこのくらいだろう」というものよりも厳しい提言がなされるとの声も聞こえてくる。最終的にどのようなところに落ち着くかは定かではないが、想定よりも厳しいものになる公算が大きくなっている。

あるべき姿を色濃く反映か

 現在、Euro 7の検討を中心になって進めているのは、EU欧州委員会の下に設けられた車両の排ガス基準に関する諮問グループ「AGVES(Advisory Group on Vehicle Emission Standards)」である。研究機関などから構成されるコンソーシアム「CLOVE(Consortium for LOw Vehicle Emissions、クローブ)」と一緒に検討を進めている。21年第1四半期にAGVESからEuro 7の最初のドラフトが出される見通しだ。

 そうしたEuro 7だが、現在取り沙汰されている規制見直しの方向性は、主に次のようなものだ(図1)。(1)ガソリン車かディーゼル車か、乗用車か重量車かといった違いによらない単一の排出基準とする、(2)車両のライフサイクルにわたる実際の排出量をモニタリングするオン・ボード・モニタリング(OBM)を導入する、(3)既存の規制物質の規制値をより厳しいものへ見直す、(4)新規の規制物質を追加する、(5)外気温-7度の低温WLTC(Worldwide harmonized Light vehicle Test Cycle)サイクル試験における規制対象物質を拡大する、(6)RDE(Real Driving Emissions)試験における適合係数(Conformity Factors、CF)を見直す、(7)RDE試験における温度・標高に応じてCFを緩和する係数(Emissions corrective factor)を見直す、(8)RDE試験にも新たな規制対象物質を追加する、(9)RDE試験の市街地区画における最低走行距離を短縮する(ショートトリップ)、(10)車載型排ガス計測装置(PEMS)では精度良く測れない成分については試験室内での模擬的なRDE試験によって規制する、(11)排ガスの悪化は承知でエンジンや部品の保護などを目的に例外的に実施する制御(補助エミッションストラテジー、AES)は最新技術を使っても回避できない場合に限定する―などである。AESとしては、排ガス再循環(EGR)を低温時に停止させる、高負荷運転時に理論空燃比よりも燃料が濃い状態(リッチ)で運転するなどが挙げられる。

図1 Euro 7(仮称)において取り沙汰されている規制強化の方向性
図1 Euro 7(仮称)において取り沙汰されている規制強化の方向性
自動車から出る排ガスの大半は、冷間始動時と高負荷運転時に排出される。そうした実態を踏まえた規制の強化が検討されている。図では、冷間始動時の排ガスに直接関わるところを青字、高負荷運転時に直接関わるところを赤字で示している。ただし、規制値やCFの見直し、規制対象物質の追加もその厳しさに拍車をかける。各社の取材に基づき日経クロステックが作成した。(写真の出所:左下はAVL、右上は堀場製作所)
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 大手エンジニアリング・サービス・プロバイダー(ESP)の1つであるオーストリアAVLによれば、この根底にあるのが、EUの欧州委員会の排ガス規制に対する次のような考え方だ。(1)ゼロエミッション(排ガスゼロ)を目標とする都市において、車両は全ての耐用年数かつ全ての運転条件においてできるだけクリーンでなければならない、(2)粒子状物質(PM)、炭化水素(HC)、一酸化炭素(CO)などの汚染物質は、主にRDE試験とOBMによって評価すべきである(ただし、路上走行だけでは計測できないものは、試験室内で試験して評価すべきである)、(3)現在は規制値などがディーゼル車とガソリン車で異なっているが、燃料性状や自動車の技術によらない統一的な規制とすべきである、(4)PMの個数(PN)規制の強化やアンモニア(NH3)規制の追加など、新しいもしくは修正した排ガス規制とすべきである―。すなわち、自動車から現実に排出される汚染物質などの環境負荷物質を、車両のライフサイクルにわたって的確に減らしていける規制にしていこうという理念がうかがえる。

 ちなみに、Euro 7の施行時期は、25年以降とする予測と、25年以降でも27年か28年とする予測がある。また、Euro 7の施行前に、可能なところからEuro 6の改正という形で組み込んでいくとの予測も出ている。

 以下、予測されているEuro 7がどんな厳しさを持つものになりそうなのか、もう少し詳細をみていく。