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 欧州連合(EU)が2025年以降の施行を目指している次期排ガス規制「Euro 7」(仮称)――。現行の「Euro 6」に対して大幅に厳しいものになる可能性があることは、第2回で紹介した通りだ(図1)。中でも最も厳しいとみられているのが、RDE(Real Driving Emissions)試験に絡む見直し。冷間始動時や高負荷運転時の排ガス低減をより強く求めるものになると予測されている。

図1 Euro 7(仮称)において取り沙汰されている規制強化の方向性
図1 Euro 7(仮称)において取り沙汰されている規制強化の方向性
自動車から出る排ガスの大半は、冷間始動時と高負荷運転時に排出される。そうした実態を踏まえた規制の強化が検討されている。図では、冷間始動時の排ガスに直接関わるところを青字、高負荷運転時に直接関わるところを赤字で示している。ただし、規制値やCFの見直し、規制対象物質の追加もその厳しさに拍車をかける。各社の取材に基づき日経クロステックが作成した。(写真の出所:左下はAVL、右上は堀場製作所)
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追加のNH3やHCHOにも厳しさ

 ただ、Euro 7に対応する上で課題となりそうなのは、それだけではない。新たに追加が予想される規制物質である。Euro 7では、アンモニア(NH3)や二酸化窒素(NO2)、亜酸化窒素(N2O)、メタン(CH4)、ホルムアルデヒド(HCHO)、アセトアルデヒド(CH3CHO)などの追加が取り沙汰されている(表1)。

表1 Euro 7における規制値の予測
大手エンジニアリング・サービス・プロバイダー(ESP)であるドイツIAV、オーストリアAVL、ドイツFEVの予測値を日経クロステックが資料を基にまとめた。欧州の現行排ガス規制「Euro 6d」および中国の次期排ガス規制「国6b」の規制値も参考として併記した。
表1 Euro 7における規制値の予測
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 これらのうち、特に注意を要するのが、NH3だ。ホンダが自社の車両を使って23度の外気温で実施した調査では、「NH3が一番厳しそう」(ホンダ パワーユニット開発統括部パワーユニット開発一部エグゼクティブチーフエンジニアの新里智則氏)だという。同氏は、「CH4はEuro 6レベルのエンジンではそれほど出ていない。CH4とN2Oは追加の装備なしにエンジン側の適合で対応できるとみている」という。

 オーストリアAVLが数車種の現行車両を用いて実施した23度のWLTC(Worldwide harmonized Light vehicle Test Cycle)サイクル試験でも、同社が新規追加を予測しているNH3、NO2、N2O、CH4のうち、同社予想の規制値を上回ったのはNH3だけだった。AVLではベースシナリオとシビアシナリオの2通りの規制値を予想しているが、NH3では順に6~10mg/km、6mg/kmとの予測。調査した車両のNH3の排出量は、それを大きく上回った。

 ただ、それ以外が全く問題なさそうかというと、違いそうだ。ドイツIAVではEuro 7の適合性検証という目的で、現行のガソリン車(ハイブリッド車含む)を数車種使って23度と-7度のWLTCサイクル試験を実施している(表2)。23度の試験では、IAVの調査でも同社が予想する規制値を超えたのはNH3だけだった。だが、-7度の試験ではNH3に加えて、HCHOやCH3CHO、さらには既存規制物質の全炭化水素(THC)や非メタン炭化水素(NMHC)が予測する規制値を超え、条件によってはN2Oや一酸化炭素(CO)もそれを超える可能性があることが判明した。

表2 IAVが実施したEuro 7に対する適合性検証結果とIAVの見解
ガソリン車(ハブリッド車含む)に対して実施した調査の結果。-7度のWLTCサイクル試験では、NH3だけでなくHCHOに対しても大規模な変更が必要になる可能性がある。また、NOxやHC、COについても課題となる可能性がある。IAVの資料を基に日経クロステックが作成した。
表2 IAVが実施したEuro 7に対する適合性検証結果とIAVの見解
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 同社では、-7度のWLTCサイクル試験の規制値を2通りで予想している。1つが、WLTCサイクルの前半3山での試験が規定された場合のもの。もう1つが同4山での試験が規定された場合のものである。前者の方が冷間始動の影響が出やすいことから、その分だけ規制値は緩く設定されるとみており、後者の場合は規制値は23度のときと同じになると予測している。そして後者の場合には、同社が実施した適合性検証において、N2OやCOも予想する規制値を超過した。