「陥没や空洞はトンネル工事と因果関係があったと認めざるを得ない。地域の住民や関係者におわび申し上げる」
東京都調布市の東京外かく環状道路(外環道)の大深度トンネル工事現場の直上で起こった住宅地の陥没事故。東日本高速道路会社関東支社の加藤健治建設事業部長は2020年12月18日、有識者委員会(委員長:小泉淳早稲田大学名誉教授)が事故後の調査結果や分析内容の中間報告をまとめたのを受けて謝罪した。同社はこれまで「陥没・空洞とトンネル工事との関係は不明」という姿勢だったが、事故からちょうど2カ月たった段階で責任を初めて認めた。
東日本高速が陥没や空洞とトンネル工事との因果関係を認めた最大の理由は、掘進したトンネルの頂部から陥没箇所や空洞箇所まで、地盤に煙突状の緩み領域が見つかったからだ。事故後の調査で明らかになった。
住宅地を通る市道が幅3m、長さ1.5m、深さ5mにわたって陥没したのは2020年10月18日。陥没穴は地中で幅6m、長さ5mの大きさに広がり、一部は宅地の下に達した。
陥没地点の47m下にある大深度地下では、外環道の南行き本線トンネルの工事が進んでいた。東日本高速が発注し、鹿島・前田建設工業・三井住友建設・鉄建建設・西武建設JVが施工。陥没の1カ月ほど前、国内最大となる外径16.1mの泥土圧式シールド機が南から北に向かって通過したばかりだった。陥没が生じた時点で、シールド機は現場から北に132mほど進んでいた。
東日本高速は事故後、周辺でボーリング調査などを実施。陥没地点の南北2カ所で土かぶり5mほどの深さに長さ27~30m、幅3~4m、高さ3~4mほどの細長い空洞があるのを2020年11月に相次いで見つけた。北側で見つかった空洞の容積は約600m3、南側の空洞は約200m3で、いずれもシールド機が掘進したほぼ真上に当たる。
周辺の地盤は、地表から深さ5mほどまではローム層が主体の盛り土となっている。陥没地点のすぐ東側には、入間川が北から南に向かって流れる。入間川の氾濫原を1960年代ごろに宅地造成したとみられる。
ローム層の下には、厚さ5mほどの「武蔵野れき層」と呼ぶ砂れき層が横たわる。武蔵野れき層からさらに下は、トンネルを掘進した大深度地下の地盤を含めて「東久留米層」と呼ぶN値が50以上の固く締まった砂層や砂れき層が分布する。東久留米層は関東平野の基盤となっている上総層群の1つだ。