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 製造現場はアフターコロナに向けた変革期を迎えている。人手不足や熟練技能者減少の深刻さが増している上に、新型コロナ対策で三密回避やリモートワークを強いられ、移動制限で外注先や顧客との交流が難しくなるなど「新しい働き方」を求められている。また温暖化ガス削減の新規制対応や脱炭素を目指す新技術の導入も急務だ。

 工作機械各社は顧客のこうした課題にどういう回答で応えようとしているのか。各社のトップに話を聞くシリーズ、オークマ 代表取締役社長 家城 淳氏に話を聞いた。

いえき・あつし:1985年、大隈鐵工所(現オークマ)入社。2006年に技術本部研究開発部部長、11年に執行役員 技術本部商品開発部部長 兼 研究開発部部長に就任。大隈技研の代表取締役社長、オークマの取締役技術本部本部長、同常務取締役技術本部本部長などを歴任し、18年に取締役副社長。19年6月から現職。(撮影:森田直希)
いえき・あつし:1985年、大隈鐵工所(現オークマ)入社。2006年に技術本部研究開発部部長、11年に執行役員 技術本部商品開発部部長 兼 研究開発部部長に就任。大隈技研の代表取締役社長、オークマの取締役技術本部本部長、同常務取締役技術本部本部長などを歴任し、18年に取締役副社長。19年6月から現職。(撮影:森田直希)
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 新型コロナウイルス感染症(以下、新型コロナ)の流行が拡大する前から、他の工作機械メーカートップらと「不確実性の時代に入った」といった議論をしていました。特に2019年は、貿易問題が顕在化したり、これまでにない大規模な自然災害が起こったり、ここ十数年とは明らかに異なる不確実性の時代が始まったと感じていました。

バーチャルコンテンツでリアルへ誘導

 コロナ禍でオークマでもデジタル化が進みました。20年7月には「ものづくりDXセンター」を新設し、そこを中核にリモートでの試切削(テストカット)や立会検査、加工技術支援などを実施して、デジタル技術の活用を一段と進めてきました。

 DXセンターは、顧客接点のビジネスを創造する組織です。リモートでもビジネスを活性化するのに必要なツールの提供や、バーチャル展示会へ顧客を誘導するようなデジタルコンテンツの準備もDXセンターの役割です。社内にあるデジタルのコンテンツを顧客向けに一気通貫で提供できるようなデジタルインフラも開発しています。リアルとバーチャルの両面で顧客が価値を体験できるようになり、それが一定の受注につながったといえます。

 顕著だったのが、米国法人のOkuma Americaです。新型コロナ拡大防止のため一時的に事務所は閉鎖しましたが、受注活動は堅実に続いていました。それは、在宅勤務しながらオンラインでのビジネスを進めていたからです。Okuma Americaでは、コロナ禍の前から始めていたWeb商談やリモート立ち会い、リモートテストカットなどをこの機に加速し、規模は小さいながら継続的に売り上げを確保していたのです。移動コストなどがかからないので経費が劇的に削減でき、想定以上の体質改善が進みました。

 そうはいっても私は、顧客がオンラインでデジタルコンテンツを見ただけで工作機械を買ってくれるとは思っていません。工作機械の販売は消費財の販売と異なり、生産手段の販売ですから顧客とメーカーの知の共感が必要です。日ごろから顧客の信頼を得て、ものづくり現場を知っていてこそ、距離の問題を克服し、リモート商談での知の共感ができるのだと思います。デジタルの中で、いかにコミュニケーションや知の共感を深めていくかが今後の最も大切な課題です。