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 製造現場はアフターコロナに向けた変革期を迎えている。人手不足や熟練技能者減少の深刻さが増している上に、新型コロナ対策で三密回避やリモートワークを強いられ、移動制限で外注先や顧客との交流が難しくなるなど「新しい働き方」を求められている。また温暖化ガス削減の新規制対応や脱炭素を目指す新技術の導入も急務だ。

 工作機械各社は顧客のこうした課題にどういう回答で応えようとしているのか。各社のトップに話を聞くシリーズ、ジェイテクト 専務取締役 工作機械・メカトロ事業本部 本部長 加藤伸仁 氏に話を聞いた。

かとう・しんじ:2010年7月にトヨタ自動車工業メカトロシステム部長に就任。17年1月にジェイテクトの理事。同年4月に同執行役員に就任。常務取締役を経て20年6月から現職。(撮影:上野英和)
かとう・しんじ:2010年7月にトヨタ自動車工業メカトロシステム部長に就任。17年1月にジェイテクトの理事。同年4月に同執行役員に就任。常務取締役を経て20年6月から現職。(撮影:上野英和)
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 新型コロナウイルス感染症(以下、新型コロナ)の影響で受注は3〜4割ほど減りました。建設機械やインフラ系など、一部の需要が戻り始めたところもありますが、ジェイテクトの工作機械事業の顧客は自動車やその関連などの大手メーカーが多く、こうした顧客は投資を見合わせる状況がまだ続いています。2021年に入っても続くとみています。ただし、製品開発や技術開発は計画通り粛々と進めています。新製品の投入も予定通りです。

デジタルツール活用の裾野広がる

 コロナ禍による受注減という問題はありますが、仕事のやり方が変わったというか、変わらざるを得なかった点でメリットもありました。

 新型コロナ以前から当社は、デジタルツインやシミュレーションとリアルの機械をどう結びつけるかという取り組みを進めていました。正直に言うと、3D設計やシミュレーションといったデジタルツールの活用という点で当社は少し遅れているという認識があり、キャッチアップしようと考えていました。

 今は設計自体をほとんど3D化しています。設計データを使ってシミュレーションできる環境が整ったわけです。営業担当者も3Dツールを使って顧客に説明するなど、みんなが3Dツールを使うようになってきています。単にオンライン会議で商談するのではなく、3Dモデルやシミュレーション結果を使って一歩踏み込んだ情報を提示するなど、デジタルデータを駆使しながらオンライン商談を進めるといった取り組みが加速しました。

 技術営業の担当者が顧客と打ち合わせる際も、従来はもっぱら紙ベースの資料を使っていました。3Dモデルやシミュレーション結果なら、実物の工作機械でさえ見られない機械の内部や主軸の中身、チャックやツーリングを画像で確認できます。できるところは3Dデータなどを使って机上で検証・確認し、最後の検証・確認だけリアルの実機で見る。これは顧客からも非常に好評です。

人手不足に生産性+知能化で応える

 ジェイテクトの工作機械事業の最大の強みは、生産性の高さです。我々の顧客は、歴史的に大手メーカーが中心。そこで、1番期待されていたのが生産性だった。例えば、20年11月に発表した大型マシニングセンターには、最大トルク2200N・mで高出力タイプの新型主軸「KAIJU SPINDLE」を標準装備しています。これは直接的に生産性に効いてきます。

 一方で、大手メーカーも近年は人手不足や熟練作業者の減少といった問題に直面しています。それに対してはスマート化、つまり機械が自律的に精度や品質を保証するような知能化の機能で応えていきます。いろいろな人が介在して微調整しているような作業を、機械が自動で処理するようにするのです。現在、現場のニーズはそこまで高まっていませんが、少なくとも我々としてはその準備はしていかなくてはならないと考えています。スマート化では、我々が持ってる加工技術を生かしたいと思っています。蓄積した加工技術やノウハウを組み合わせてスマート化していく。

 11月に発売した大型ロール研削盤にもスマート機能を搭載しています。大型ロールを高精度で研削する作業は、熟練の技が要求されます。ワークを計測しては微調整してという作業を繰り返して研削しているのですが、新製品にはテーバー(ロール両端の直径の差)を自動修正する機能を提供しました。今後もスマート化の機能をどんどん搭載していきます。

 当社は19年に、工作機械に搭載する基盤技術や最新技術を体系化したブランド「TAKTICA」を発表しました。今後は、それらをさまざまな機械や特性に応じて組み合わせつつ実装していきます。生産性の高さという従来の強みに、いかにスマート化の機能を足していくかが今後のテーマです。