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 製造現場はアフターコロナに向けた変革期を迎えている。人手不足や熟練技能者減少の深刻さが増している上に、新型コロナ対策で三密回避やリモートワークを強いられ、移動制限で外注先や顧客との交流が難しくなるなど「新しい働き方」を求められている。また温暖化ガス削減の新規制対応や脱炭素を目指す新技術の導入も急務だ。

 工作機械各社は顧客のこうした課題にどういう回答で応えようとしているのか。各社のトップに話を聞くシリーズ、ヤマザキマザック 上席執行役員商品開発本部副本部長兼FAソリューション事業部事業部長 堀部和也 氏に話を聞いた。

ほりべ かずや:1997年にヤマザキマザックに入社。米Mazak Corporationなどを経て、2014年に技術本部技術商品企画室室長、15年に技術本部ソリューション開発部部長に就任。18年に執行役員技術本部ソリューション事業部事業部長、20年から現職。(撮影:上野英和)
ほりべ かずや:1997年にヤマザキマザックに入社。米Mazak Corporationなどを経て、2014年に技術本部技術商品企画室室長、15年に技術本部ソリューション開発部部長に就任。18年に執行役員技術本部ソリューション事業部事業部長、20年から現職。(撮影:上野英和)
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 コロナ禍によって、当社における開発テーマが変わってきた面があります。1つは工作機械をネットにつなぐコネクテッドの重要性が高まってきました。もう1つが自動化やデジタル化で、顧客からの要望が実際に増えています。顧客は投資には慎重ですが、今のうちに検討は進めておきたいようです。

クラウドでの手厚いサービスで差異化

 当社では今、コネクテッド・サービスに力を入れています。具体的には、工作機械の監視やサポートをインターネット経由で行う「Mazak iCONNECT」(以下、iCONNECT)を2019年の春から始めました。オプション機能ですし、コストもかかるため導入の広がりは緩やかでしたが、コロナ禍で直接顧客と行き来できなくなり、重要性がさらに増しています。

 工作機械という「もの」を売るという我々の基本ビジネスは変わりませんが、そこにソリューションという「こと」を付加していかなくてはなりません。今後、iCONNECTのようにクラウドでつながって手厚いサポートを提供していくソリューションが拡大するのは間違いありません。

 その重要性を再認識したこともあり、最新型のNC装置「MAZATROL SmoothAi」の搭載機には、標準機能としてiCONNECTを提供します。iCONNECTでは、当社のサポートセンターによる遠隔診断サービス受けられる他、遠隔地から機械の状態を監視する機能も使えます。メーカーとして機械の状態を全て把握できるようなデータを取得しますので、かなり細かい状態まで分かります。どの作業者が機械の前にいるかどうかなども把握でき、従来の「見える化」よりもさらに踏み込んだ情報を得られるのです。

ユーザーの認識にも変化

 遠隔診断も拡充しています。21年4月からは人工知能(AI)を使った「ミル主軸パフォーマンス診断」をiCONNECTのサービスに追加します。軸受を中心に主軸の状態を定期的に自動診断するものです。異状を検出した場合には当社のサポートセンターにつながり、さらに詳細な遠隔診断を受けられます。

 従来は、顧客からの要望を受けてスキルを持った当社の技術者を派遣し、専用の装置で検査する必要がありました。これと同様の作業をセンサーと遠隔診断でこなせますので、国内はもちろん、海外の工場でも即座に対応できます。我々にとっても移動のロスが減るメリットがあります。スキルを持つ技術者は限られますから、大きな意味があります。

 これまでもコネクテッド・サービスを拡大させようとしてきましたが、顧客にとってコスト増となるためなかなか普及しませんでした。しかし、今回のコロナ禍で顧客も事業継続性などをあらためて考えるようになり、コネクテッド・サービスの重要性が認識されました。顧客の設備投資という視点でもそうですし、我々の社内での意思決定という点でも、しきい値が変わった感はあります。

 我々が提供する工作機械という生産財は、顧客の製造現場で10年、20年と長く使われます。インターネットでつながっていれば、デジタル化や知能化のためのソフトウエアを常に最新のものにアップデートし、賢く進化させられます。機械単体をいくら造り込んでも時間がたてば陳腐化します。だからこそコネクテッド・サービスが必要なんです。