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 「デジタルトランスフォーメーション(DX)はトップダウンで進めるべきである」。日経BP 総合研究所 イノベーションICTラボによる独自調査「デジタル化実態調査2020年版(DXサーベイ2020年版)」(有効回答数は865社)では、こうした自由意見が多数寄せられた。

 DXは単に情報システムを構築することではない。DXとは、売上高の拡大や従業員の生産性向上などを図るための変革である。これらをやり抜いて、ビジネス成果を上げるためには、経営トップの姿勢が問われることは言うまでもない。DXで成果を上げられるかどうかは、経営トップの関与度にかかっている。

 DXに対する経営トップの関与度を探るため、本調査では「DXプロジェクト(DXを推進するためのプロジェクト)に関する経営トップの姿勢はどれですか」と尋ねた(「DXを全く推進していない」と回答した企業は、質問対象から除いた)。

 最も多かったのは、「(経営トップはDXプロジェクトの)重要性を理解しているものの、現場任せ」(37.5%)で、4割弱を占めた(図1)。2番目に多かったのは、「重要性を理解し、DX戦略推進組織を支援している」(30.5%)である。

図1 DXプロジェクトに関する経営トップの姿勢
図1 DXプロジェクトに関する経営トップの姿勢
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 これに「重要性を理解し、DX戦略をリードしている」(13.7%)、「分からない」(13.1%)が続く。最も少ないのは、「重要性を理解していないし、無関心」(4.9%)である。

 前回調査(2019年7~8月実施)でも全く同じ質問をしたところ、「(経営トップはDXプロジェクトの)重要性を理解しているものの、現場任せ」が41.6%で最も多かった。

 今回と前回の調査ではDXの定義を若干変更しているため、単純比較はできない。とはいえ、「コロナ前と後で、DXに対する経営トップの関与の状況はほとんど変わっていない」といえそうだ。

流通・物流・運輸業と製造業で現場任せの風潮

 Withコロナ時代であろうと、経営トップの4割弱が、DXを現場任せに――。これが全体の傾向である。ここからは、DXプロジェクトに対する経営トップの姿勢を業種別に見ていく。

 経営トップが最も積極的なのは情報・通信サービス業、最も「現場任せ」なのが流通・物流・運輸業となっている(図2)。情報・通信サービス業は、「重要性を理解し、DX戦略をリードしている」(29.7%)と「重要性を理解し、DX戦略推進組織を支援している」(37.8%)を合算した割合が、ほかの業種に比べて突出して大きい。

図2 DXプロジェクトに関する経営トップの姿勢(業種別)
図2 DXプロジェクトに関する経営トップの姿勢(業種別)
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 流通・物流・運輸業と製造業では、現場任せの風潮があるようだ。 流通・物流・運輸業の特徴は「重要性を理解しているものの、現場任せ」(45.6%)の割合が、ほかの業種に比べて最も大きいことである。製造業で「重要性を理解しているものの、現場任せ」と回答した割合は41.7%で、全体の数字を上回る。

 流通・物流・運輸業と製造業ともに、「重要性を理解し、DX戦略をリードしている」が1割強、「重要性を理解し、DX戦略推進組織を支援している」は3割以下である。

 金融業については、「重要性を理解し、DX戦略をリードしている」の割合が18.8%で、情報・通信サービス業に次いで多い点が目を引く。そんな金融業であっても、「重要性を理解しているものの、現場任せ」の割合が37.5%で全体(37.5%)の結果と同じである。

 建設・不動産業で目を引くのは、「重要性を理解し、DX戦略推進組織を支援している」(47.2%)の割合が5割近くを占めていることだ。「重要性を理解しているものの、現場任せ」の割合は26.4%で、全体よりも10ポイント以上小さい。