全4479文字
PR

「ボーイングは100%正しい」というような思い込み

楠木:航空機の分野で、藤野さんが実際にお気づきになった事例などありますか?

藤野:そうですね。航空機産業はアメリカがトップだ、という固定観念があります。例えば、ボーイングがこう言っていると聞くと疑うこともなく「それが100%正しい」といったような思い込みをする場合がすごくよくあります。

 最近は、外国人技術者という言葉が(日本の)記事によく出てくることにも違和感があります。我々のようにアメリカで仕事をしていると、いろんな国から技術者が集まってきて仕事をするのが日常です。日本人が一律に「外国人技術者はスキルセットを持っていて、航空機のプロだ」と言って信じているような感じなのは、すごく違和感があります。

 野球で例えるなら、マイナーリーグの選手を、力量も分からないのに、いきなりメジャーの試合に先発させるようなことをしていると感じることも時々あります。日本人の技術者でも優秀な人もいるし、外国人技術者でも本当のスキルを持っていない方もいるのですから、その本質を的確に見極める目が大切だと思います。

 もう1つは、時間的なトラップです。特に日本の方はどちらかというと、「昔はすごかった」と言うケースが多いように思います。元プロ野球選手の大御所が、ダルビッシュ(有)投手の投球を見て「稲尾(和久投手)の球はこんなもんじゃなかった」と言うようなイメージです。確かにそれぞれの時代でトップだった人は特別な人たちだったと思いますが、現在の技術とは単純に比較できません。時代によって技術も進化、変化しています。これはアメリカと日本で少し違う感じがしますが、日本人の中には飛行機の世界でも、同じような時間的な遠近歪曲トラップに陥っている例もあるのではないかと思います。

楠木:日本から見て、航空機はアメリカが世界一で、ボーイングが何かを言っているだけで「すごい」と思っていたら、ホンダジェットは出てこないはずです。歴史が長いアメリカの航空機産業は進んでいるし、世界のトップであることは間違いないわけですが、やっていることが何でも正しいわけではありません。藤野さんが事業を始めるに当たって、アメリカやボーイングといった、いわば遠くにあるキラキラしたものを、最初の頃は、どういうふうに見ていらっしゃったのでしょうか?