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一緒にいると本当の姿がだんだん見えてくる

藤野:もちろん、私もアメリカに来た当時は、ボーイングやNASAについては、先ほどの楠木先生の表現にかなり近い感じを持っていました。ただ、NASAの人やボーイングのOBの方と一緒に仕事をしていると、その本当の姿、すなわち何が本当で、何が本当でないのかといった実力がだんだん見えて分かってきます。20代からそういう経験をしてきたので、私の航空機産業の見方に関するキャリブレーション(調整)は20代に培われたという感じです。

 今振り返ってみると、もし私がずっと日本にいて、日本の中でホンダジェットのコンセプトを提案していたとしても、いまだに認められず、成功していなかった可能性もあったのではないかと思います。日本ではNASAやボーイングといった権威の前例がなくても認められるケースはとても少ないからです。そのようなアメリカと日本の違いをよく分かっていたので、私は最初から論文をアメリカで発表し、最初にアメリカの権威であるAIAA(米航空宇宙学会)から認められ評価されたことを、(ある意味で)利用した部分もあります。アメリカの航空業界のオーソリティー(権威)の評価があったからこそ、日本でも認められたようなところもあるのだと思います。

 しかし、日本でこれはよくあることです。(特許を多数保有する)半導体の研究者で、東北大学総長や首都大学東京学長を歴任された西澤潤一先生がかつてこういった趣旨のことをおっしゃっていました。「自分の技術を日本企業に持っていくと、これは西澤の発明じゃないと言われる。外国企業に行くとこれは西澤の発明だ、と言われる」と。

 アメリカでもいろいろな人がいて、もちろん全ての人が同じではありませんが、NASAやボーイングなどの中には他者に迎合しないで本質を見抜く人もいるのが日本との違いのように感じます。日本はみんながコンセンサスを持って一緒にやっていることが多いので、それが強みでもありますが、まったく新しいコンセプトに対して概して否定的で(たとえそれが正しいと感じたとしても)多くの人を敵に回しても「すごい発見だ」と言える人はほとんどいないと思います。

 アメリカ人の中には率直にそれができる人もいることが、アメリカのすごいところだと感じます。私がいろいろなチャレンジをした際に、その本質をきちんと評価して認めてくれる人がいたのは素晴らしいことだったと思います。