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ライオンは歯磨き剤向けの香料処方である「レシピ」の生成AIを開発した。2021年から実際に新商品の香料開発に活用する。2020年に入ってAIシステム導入の検討を始めプロトタイプを作り、同年7月から試験運用した。
ライオンは500種類以上の香料から選んで調合し、さまざまな味や香りの歯磨き剤を開発している。香料とは口の中の爽快感を出すためのミントやメントール、口に歯磨き剤を含んだときの第一印象となるフルーツやフローラル、味の土台となるスパイスなどだ。
ライオンでは、フレーバリストと呼ぶ約10人の香料開発技術者が、試行錯誤しながら調合を決めていく。各原材料をどれくらいの分量ずつ配合するかを、料理になぞらえて「レシピ」と呼ぶ。ターゲット層の性別や年齢、商品コンセプトに基づき、清涼感やフルーティーさ、薬効感などのレベルを調整して決定する。
試験運用では「AIを活用することで香料開発期間を半減できた」とライオンの黒川博史 研究開発本部戦略統括部データサイエンス室室長(所属部署および役職は取材時のもの、以下同)は話す。従来は熟練者であっても1つの香味を開発するのに数カ月かかっていた。
香料開発は大まかな配合を決める「骨子開発」と、目標の香味を目指してさらに調整していく「最適化」という2つのプロセスから成る。AIが効果を発揮するのは骨子開発のプロセスだ。最適化は社員が担う。