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 世界経済を見ると、圧倒的に大きな価値を生み出しているのは米国のGAFA(グーグル、アマゾン・ドット・コム、フェイスブック、アップル)や、中国のBAT(バイドゥ、アリババ、テンセント)。その共通点はデジタル技術を活用し、巨大なネットワークと膨大なデータを使って価値を生み出していることです。彼らの規模、そして洗練されたビジネスモデルに真正面から対抗できる日本企業は1社もないと言えます。

 では、日本はもう手遅れなのでしょうか。いえ、決してそんなことはないのです。それどころか、私が見るところ、日本には「最初で最後の大逆転のチャンス」が残されています。それは、現在のGAFAの勢いさえもはるかに上回るほどの、巨大なチャンスです。そして、このチャンスをものにできるかどうかは、これからの私たちの考え方と行動にかかっています。

日本企業にチャンスが…(写真:PIXTA)
日本企業にチャンスが…(写真:PIXTA)

 このチャンスをつかむためのカギとなるのが、「スケールフリーネットワーク」。日本が今日まで培ってきた「ものづくり」の資産と「スケールフリーネットワーク」を組み合わせれば、GAFAに代わって、新たに世界の覇権を握ることも決して夢物語ではないと考えています。「そんなうまい話が本当にあるのか」と疑う方もいるかもしれません。ですが、私は「日本は大逆転できる」と固く信じています。だからこそ2018年にシーメンスを辞め、東芝に飛び込むことにしたのです。

 入社後、社内を見て回り、私は心底驚きました。そこにあったのは磨き抜かれたものづくりのワザや、世界最先端の技術のタネ、そして海外でもなかなか見つからないような優秀な人材といった、まさに「宝の山」でした。そしてこのとき、私の考えは確信に変わりました。日本の技術や人材が衰退したわけではないのです。新しいデジタルの時代に、その生かし方に気づいていないだけに見えました。その方法さえ分かれば、日本は必ず大逆転できるはず。

 では、この大逆転のチャンスを生かすためにはどうすればいいのでしょうか。そのカギとなる「スケールフリーネットワーク」とは一体何でしょうか。具体的に説明していきます。まずは、前提となる「DX」について見ていきましょう。

コロナ禍が「デジタル化」を加速する

 2020年に世界を襲った新型コロナウイルスは、私たちの生活を大きく変えました。当たり前だと思っていた満員電車がぱったりとなくなり、在宅勤務が一気に普及しました。出張の代わりにリモート会議で済ませるようになり、ズーム・ビデオ・コミュニケーションズの「Zoom(ズーム)」やマイクロソフトの「Teams(チームズ)」などのツールが市民権を得ました。コロナ以前と以後で、ライフスタイルが大きく変わったのは誰もが認めるところでしょう。

 今後、コロナ禍がどういう道をたどるのかは、誰も予想できません。やがて治療法が確立し、人類はこのウイルスと緩やかに付き合っていくことになるのでしょう。では、コロナ禍は一体何を変えたのでしょうか。

 例えば、100年という長期スパンで考えてみましょう。新型コロナウイルスが感染拡大したことで、100年後の未来はこれまで想像されていた世界とはまるで異なる世界になるのでしょうか。私は100年というスパンで見れば、そこまで大きな違いがあるとは思っていません。なぜなら、コロナ禍は今後永久に続く「トレンド」ではなく、一過性の「イベント」にすぎないからです。

 歴史を振り返ってみると、人類は過去にもスペイン風邪やペストなど、大規模な伝染病を経験し、克服してきました。決して今回が初めての経験ではないのです。過去のパンデミックと比べれば、今回のコロナ禍のインパクトはそこまで大きいものではありません。いずれ、コロナ禍は去り、日常生活が戻ることでしょう。

 確かにコロナ禍により、人々は通勤する代わりに自宅からリモートワークするようになりましたし、人が集まる繁華街に行く代わりにオンラインで買い物する機会が増えました。人と直接会う代わりに、ビジネスカンファレンスから親しい友だちとの「飲み会」まで、オンラインで参加することは珍しくなくなっています。

 しかし、こういったデジタルテクノロジーの活用は、コロナ禍がなくてもいずれ進んでいたはずなのです。