全4450文字
PR

 DX(デジタルトランスフォーメーション)をいまだ誤解している企業が多い。ビジネスをデジタル技術によってトランスフォーメーション(変革、変容)していくのが本来のDXであり、往々にして既存のビジネスや方法論を破壊するため、DXは痛みを伴うことも多い。

 東芝執行役上席常務・最高デジタル責任者で、東芝デジタルソリューションズ取締役社長を務める島田太郎氏とフューチャリストの尾原和啓氏による連載「スケールフリーネットワーク」の第2回では、日本再浮上のカギを握るスケールフリーネットワークが発見された経緯を見ていく。

※1月発売の『スケールフリーネットワーク ~ものづくり日本だからできるDX~』から一部を抜粋して連載します。書籍の内容とは一部、異なりますことをご了承ください

 そもそも、ちまたで盛んに叫ばれている「DX」とは何でしょうか。実は、そこを誤解している企業も少なくありません。

 ハンコを廃止して電子承認にしたり、会議をオンライン化したり、リモートワークを推進したりと、様々な形でデジタル活用に取り組んでいる企業もたくさんあると思います。でも、これらはOA(オフィスオートメーション)化やIT化の範疇(ちゅう)に入る話で、本当の意味でのDXとは呼べません。

 DXは「デジタルトランスフォーメーション」の略語です。単に既存の業務をデジタルに置き換えるのではなく、ビジネスをデジタル技術によってトランスフォーメーション(変革、変容)していくのが本来のDX。往々にして既存のビジネスや方法論を破壊するため、DXは痛みを伴うことも多くあります。

 しかし、今後あらゆるものがネットワーク化してつながっていく社会の中では、変革を拒み続けていては生き残ることはできません。DXから逃れられる企業は1社もなく、あらゆる企業が何らかの形で「やるしかない」状況に追い込まれるはずです。これを自分ごととして捉えている企業は、まだまだ多くないと言えるでしょう。

DXのための「場」を用意する

 製造業の現場では「モノからコトへ」というスローガンが盛んに叫ばれています。これは、単にモノを製造して販売するのではなく、そのモノがもたらすコトをサービスとして販売していきましょうという考え方です。

 しかし、私はこの「モノからコトへ」に懐疑的です。「コト」を売るということは、顧客のニーズに合ったサービスを提供側が構築し、ソリューションを提示するということ。でも、顧客が何を必要としているか知っているのは、顧客自身です。

 提供側がいくら一生懸命ニーズを聞き取り、それに応じたソリューションを提供したとしても、限界はあります。では、どうすればよいのでしょうか。「コト」を提供するのではなく、コトが起こる「場」を提供しよう、というのが私の意見です。

 具体的には、製品にかかわる技術をできるだけオープンにし、他社の製品やサービスが自由に接続できるようにするのです。すると、ユーザーが自分のニーズに合わせて自発的に様々な製品をつなぎ始め、ネットワークが育ち始めます。

 このネットワークが育ったときに生まれるのが、連載の主題である「スケールフリーネットワーク」です。スケールフリーネットワークは、非常に大きな爆発力を秘めており、インターネットの世界で巨大な価値を生み出してきました。そして私は、このスケールフリーネットワークこそが、製造業にとどまらず、今後あらゆるビジネスにとって欠かせないものになると考えています。