全2604文字
PR

 2050年までの「二酸化炭素(CO2)ネットゼロ」に向けて、世界各国が本格的に動き始めた。エネルギーに関わる産業にとっては「ゲームチェンジ」の始まりで、各国は新たな覇者を目指してゼロカーボン技術の開発にしのぎを削る。鍵となる技術はなにか、ゼロカーボンの実現後に産業アーキテクチャーはどう変わるのか考察する。

 ゼロカーボンの中核技術として、真っ先に挙げられるのは再生可能エネルギーである。各国の固定価格買取制度(FIT)による追い風が吹く。化石燃料の「座礁資産」化を忌避した投資家らが資金を再エネにシフトすることで、劇的なコストダウンが進んでいる。

 再エネとセットで注目を集める蓄電池も大幅なコストダウンが進む。背景には、中国が電気自動車(EV)産業を強力に推し進めることがある。EVは蓄電池の主要アプリケーションであり、EVの大量生産に合わせて蓄電池のコストが下がっている。

 蓄電池のコストは今後も下がり続けるだろう。EVの低価格化が進み、内燃機関車との価格差が急速に小さくなっている。経済性の観点でEVは離陸寸前と言え、爆発的な普及が期待される。さらに次世代リチウムイオン電池(LiB)の実用化が射程圏内に入ることも大きい。

 再エネや蓄電池の低価格化が進むことで、発電・(陸上)輸送セクターのゼロカーボン化の将来は順風満帆に思える。一方で死角と思えるのが、再エネや蓄電池それ自体のゼロカーボン化である。これらのリユースやリサイクルへの本格的な取り組みはこれからであるし、特に蓄電池は製造過程で多くのCO2を排出する。

 例えば再エネの代表例である太陽光パネル。国内ではFIT制度の開始以降に急速に普及した。その耐用年数は20~30年程度とされ、2030年以降に使用済み太陽光パネルの廃棄物が大量に出ると見込まれる。対策の議論はこれからだ。

 また欧州は自動車に対してライフサイクル全体を考慮した環境評価(LCA:Life Cycle Assessment)規制の導入を検討する。それに伴い、蓄電池に対して製造段階のリサイクル材料比率などを規制する検討を進めている。今後はリサイクルを考慮した製品の再開発やサプライチェーンの再構築などが要るだろう。

 企業側も手を打ち始めている。例えば、ベルギー・ユミコア(Umicore)は電池のリサイクルと、リサイクル材を活用した正極材の製造・販売を計画している。