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 2050年までの二酸化炭素(CO2)排出量「実質ゼロ」に向けて、世界各国・地域が本格的に動き始めた。エネルギーに関わる産業にとっては「ゲームチェンジ」の始まりで、各国・地域は新たな覇者を目指してカーボンゼロ技術の開発にしのぎを削る。今回は海外の先進企業の戦略を俯瞰(ふかん)しながら、カーボンゼロ事業の勝利の方程式を考察する。

息の長いカーボンゼロ事業、先進企業はどんな戦略を描くのか(出所:Engie)
息の長いカーボンゼロ事業、先進企業はどんな戦略を描くのか(出所:Engie)
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 カーボンゼロ事業で難しいのは、市場やバリューチェーン(VC)を新しく創出する必要があることに加えて、市場勃興に時間がかかることである。

カーボンゼロ事業の勝利の方程式とは
カーボンゼロ事業の勝利の方程式とは
市場を新しく創出することに加えて、息の長い取り組みが要る。協調と競争の巧拙が将来の生き残りを左右する。(出所:アーサー・ディ・リトル・ジャパン)
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 エネルギーシステムは上流から下流までつながることで初めて消費者に便益をもたらす。逆に言えば、バリューチェーンの一部分があるだけでは消費者に便益はなく、企業もマネタイズできないことを意味する。

 つまりカーボンゼロ事業においては、他産業やバリューチェーン上の他の企業と組むことが重要であり、産業構造の「横断性」と「越境性」を意識した戦いを仕掛ける必要がある。

 また市場が大きくなるまでに時間がかかることから、一部の巨大企業を除いて、周辺領域まで広く投資するのは難しい。自社の得意領域を見極めた上で、近傍領域は他社に任せるという大胆な発想が必要になる。

 日本企業の大半はこれからだろうが、欧米では既にカーボンゼロ事業の「横断性」と「越境性」を意識した戦略にかじを切る企業が増えつつある。そこで欧米のエネルギー事業者やインテグレーター、部品メーカー、素材メーカーといった各事業領域における先進企業の戦略を読み解く。

 カーボンゼロ事業に力を注ぎ始めた日本の電力・ガス会社や日立製作所のようなインテグレーター、燃料電池に強いトヨタ自動車、素材の三菱ケミカルホールディングスといった日本を代表する企業にとって、手ごわい競合になるとともに、協業対象にもなり得るはずだ。

先進4社の取り組み
先進4社の取り組み
各社に共通するキーワードは「横断性」と「越境性」だ。(出所:アーサー・ディ・リトル・ジャパン)
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