さまざまな業界を「破壊(ディスラプト)」してきた米Amazon.com(以下、Amazon)がここ数年、次の標的として狙っているのがスマートホーム分野である。2014年に発売した、音声対話機能「Alexa」に対応したスマートスピーカー「Amazon Echo」を皮切りに、日常生活で利用する機器やサービスを次々と送り出している。Alexaの機能向上や「Echo」シリーズの製品(以下、Echoデバイス)のラインアップ拡充に取り組みつつ、Alexaを搭載、あるいはAlexaと連携する機器を増やしてエコシステムを拡大してきた。
18年秋にはAlexa対応のAmazonブランドの家電製品のラインアップを一気に拡充し、電子レンジや壁掛け時計、コンセントなどを販売するようになった。19年9月には、Alexa対応のオーブンレンジを追加した。
スマートホームの無線通信規格の策定にも乗り出している。Amazonは19年12月、米Appleや米Googleなどとタッグを組み、無線通信規格「Zigbee」の推進団体である「Zigbee Alliance」内に新たなワーキンググループ(WG)「Connected Home over IP」を立ち上げたことを発表した。スマートホーム向け機器の相互接続性を確保する新しい接続プロトコルを開発するのが狙いだ。
スマートホームで重要な要素となるセキュリティー分野にも注力する。スマートドアホンなどを手掛ける米国の新興企業Ring(リング)を18年に買収したのを契機に、ホームセキュリティー分野に本格的に参入した(図10)。20年秋には、自宅に止めた自動車に対する盗難行為を察知して所有者に知らせる車載機器や、自宅警備用の小型ドローンを発表するなど、競合とは一風変わった手を繰り出してきた。