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(写真:行友重治)
(写真:行友重治)
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大型家電の販売台数で12年連続世界トップと、「家電の王者」として君臨する中国ハイアールグループ。多くの有力家電メーカーを取り込んで技術力とシェアを高めてきた。同社が今、成長戦略の中心に据えて強力に推し進めているのが家全体をつなぐスマートホームである。今後、IoT家電が主流となりサービスによる付加価値の比重が高まる中で、どのような事業戦略を描くのか。ハイアールグループの副総裁でハイアールジャパンリージョンのCEOを務める杜鏡国氏に聞いた。(聞き手:内田 泰、東 将大)

今後10年を見据えると、インターネットにつながる「IoT家電」が重要になると思います。この動向について、どのようにお考えでしょうか。

 IoT家電、知能家電とも呼んでいますが、私たちはこれらの製品単体ではなく、家全体がつながる「スマートホーム」や、もっと大きなエコシステムとしての在り方に注目しています。例えば冷蔵庫なら、“冷やす”という機能以外に次のような情報を集約することで食生活のエコシステムを創出しています。中に何が入っているかの確認、食品の発注、食品の購入日や賞味期限の管理、料理を作るレシピの入手、今日の献立のおすすめ、食品の産地情報の表示、信頼できる食品メーカー情報の提示、です。

 これらは、私たちが食品の生産販売までをプラットフォーム化しているからできることです。優秀で信頼できる食品メーカーにプラットフォームへ参加してもらい、売り場として弊社を利用してもらいます。参加するメーカーや販売する商品は厳しくチェックして、弊社がお墨付きを与えた信頼できる食品を提供する仕組みです。日本と違って中国や東南アジアでは、スーパーに並ぶ食品の信頼性が高くないため、我々がここを保証できれば信頼できるブランドとして消費者に使ってもらえます。

 同様に洗濯機でもエコシステムを創れます。ある衣服メーカーがプラットフォームに参加したら、その服やブランドを選んだ消費者は、素材や工場などの情報をすべて得られます。メーカー側も消費者がどの商品を好きか、どれを購入して使っているかなどの情報を得られます。

 例えば、衣服メーカーとRFIDを使った取り組みを進めています。RFIDによって衣服を特定し、スマートミラーと連携させてバーチャルクローゼットのようなものを中国では提供しています。自分が持っている服の中から、今日はどれを着ようかというコーディネートを提案したり、着た後に洗う際はRFIDによって服を判別して、最適な洗濯メニューを提案したりできるようになっています。ちなみに、これを私たちは衣類のインターネットとして「IoC(Internet of Clothing)」と名付けています。同様に食品の場合は「IoF(Internet of Food)」です。

2019年には家電事業の主要子会社「青島ハイアール」の社名を「ハイアールスマートホーム」に変更しましたが、なぜここまでスマートホームに力を入れるのでしょうか。

 会社を経営していく中で、次のステップを考える必要があったというのが理由の1つだと思います。弊社は非常に早い段階から、今までの単なる家電製品を設計・製造・販売する家電メーカーから、プラットフォームを運営する会社へと変化していきました。そこから、IoTによりエコシステムを創ろう、自社の商品や技術だけではなく、関連する各メーカーの商品とつなげられるところを全部つなげたエコシステムにしよう、と進んできたわけです。

 エコシステムを運営するようになると、手掛ける分野がどんどん広くなります。例えば冷蔵庫を入り口として、食生活のプラットフォームをベースに野菜作りや健康管理関連のエコシステムを創り上げます。他社と提携するだけではなく、もしかしたら工場の生産ラインを使って野菜などの食品を作り始める可能性もあります。これはエコシステムを創ろうとしないと見えない視点ですが、今では弊社の冷蔵庫事業本部がとても関心を持っている分野です。

 これまでに築いてきた消費者との信頼関係を土台にして、消費者とプラットフォーム、そしてIoTシステムを連携させたエコシステムを創ることができる点が、この分野に注力する際の弊社の優位性になります。