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大変革期を迎えている生活家電の最大のトレンドが、スマート家電とも呼ばれる「IoT家電」である。今回はロボット化する現状を追った。

今後は「センサーリッチ」へ

 生活家電は今後、2極化が進んでいく(図7)。一方は高価な「ハイテク家電」、もう一方は安価な「ローテク家電」である。ただし、いずれにおいてもIoT連携は必須である。

図7 2極化する生活家電の今後
図7 2極化する生活家電の今後
将来的に、生活家電はハイテクとローテクで2極化していく。ハイテク家電は多数のセンサーを搭載し、取得データやAIを活用した高付加価値化によって高価格帯の製品となる。一方のローテク家電は、よりシンプルな製品で機能を絞り、OEMによる大量生産などによって価格を抑えた製品となる。ただし、どちらもIoTサービスへの対応は不可欠になる。(図:日経クロステック)
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 データ活用が鍵になるIoT家電で欠かせないのは、周囲や使用時のデータを収集することである。ハイテクなIoT家電はより多くのセンサーを搭載するようになり、「センサーリッチ」へと進化していく。一方で、プライベートブランドなどで提供されるような、機能をそぎ落としたシンプルで安価な、ローテクなIoT家電の需要も拡大していく。

 パナソニック子会社のShiftall代表取締役CEOの岩佐琢磨氏は「ハイテク家電は、『賢くなる』ことがポイントの1つ」と話す。センサーが増え、データ分析や最適化が進み、これまで手動だった操作が自動化されていく。

 低価格帯で勢いのある中国メーカーなどに価格競争を挑まなければならないローテク家電と異なり、付加価値をより高くできるハイテク家電は価格を上げやすく、ブランド商品などで高価格帯を維持してきた日本メーカーが参入しやすい領域である。

行き着く先はロボットか

 センサーリッチが進んだ先にあるのは家電の「ロボット」化である。既にロボット掃除機は、数十のセンサーを搭載するなど、家電の枠組みを超えた存在になっている(図8)。例えば、障害物を検知する赤外線センサーや距離画像センサー、周辺認識と地図作成のためのSLAM(Simultaneous Localization and Mapping)用カメラ、姿勢制御の慣性計測装置(IMU)、ブラシ回転数などを計測する回転センサーなどである。

図8 数十のセンサーを載せたロボット掃除機が周囲を認識
図8 数十のセンサーを載せたロボット掃除機が周囲を認識
センサーリッチな存在であるロボット掃除機。複数のセンサーを用いて動作状況を検出し、周辺の部屋の3次元地図を生成してスマホアプリ「iRobot HOME」から状況の確認や掃除箇所を指示できる(a)。搭載したカメラの映像からクラウド上で画像認識して部屋の家具配置などを取得できるほか、Wi-Fiの通信強度などからIoTデバイスを検出してマッピングできる(b)。ロボット掃除機の需要は拡大傾向にあり、同様の製品として床拭きロボット「ブラーバ」や、屋外の芝刈りロボット「Terra」(c)などを開発している。(写真:iRobot)
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 「我々は、家電ではなくロボットとして『ルンバ』を作っている」(アイロボットジャパン プロダクト&マーケティングストラテジー部長の山内洋氏)。米iRobotは、02年からロボット掃除機「ルンバ」を販売してきた。「最初の10年で掃除機としての清掃能力を追求し、その後は独自性や機能性を高めてきた。今後はユーザーのライフスタイルに寄り添った、知性を持った製品へと進化させていこうとしている」(山内氏)。

「家全体をロボットに」

 iRobotが次に目指しているのは、IoT家電を複数導入し、あらゆる家電がつながって情報を共有する「スマートホーム」である。

 同社はこれを「家全体のロボット化」と呼ぶ。ロボットと言っても、SF映画に出てくる変形したりするロボットではない。同社はロボットを「物理的な世界を感知し、それに応じて思慮深く行動する物理的なシステム」と定義する。その上で「スマートホームは、同様に物理世界を感知してインタラクションをもたらす物理的な空間であるため、ロボットと呼べると考えている」(山内氏)。

 スマートホームの中心にはルンバを据える。「ルンバは唯一、家の中を自動で動き回れるデバイスだ」(山内氏)。家の中を移動してセンシングし、測距した間取りなど様々な情報をデータ化できる。

 米国では、Wi-Fiの通信強度やMACアドレスからIoT家電を検出してマッピングしたり、家具や家電を画像認識してデータ化したりする機能を実験しているという。「ルンバが得たデータを、ユーザーが保有する他のIoT家電のシステムに渡せれば、ルンバがスマートホームのハブになれる」(山内氏)。