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 そこで両社は、デザインの重要性を訴求することから始める。具体的には、(1)スタートアップにおけるデザインの効果や効能を明らかにする、(2)スタートアップの成長に効果的なデザインのアプローチや手法を提示する、(3)スタートアップに最適なデザインに関する契約の標準を確立する、の3つに取り組む。さらに、研究成果や契約書のひな型などを今後開設するWebサイトで公開したり、情報交換を目的としたイベントを開催したりする予定だ。

「絵を描かないデザイン」で勝負

 今回の取り組みの背景には、「デザイナー側の説明が足りていなかった」(ソニーデザインコンサルティングの江下氏)という反省もある。実は、ソニーにはデザイナーの成果を数値化する仕組みがあるという。ただし、それはあくまで内部の人事評価などへの利用を想定したもの。社外向けのビジネスにおいて、デザインやデザイナーの価値を示すまでには至っていないという。

 そのことは、デザインの対象が外観形状やロゴなどに限定される要因にもなっていた。「形や色を決めていくら」「ロゴを作っていくら」という契約形態は発注側としても分かりやすいし、料金の相場も形成しやすいからだ。

 一方、ソニーデザインコンサルティングは「絵を描かないデザイン」(同社の福原氏)を打ち出している。ビジネスモデルやユーザー体験を一緒に考えるコンサルティングに近い。だからこそ、価値を数値化できるようにしなければならない。

 スタートアップ側にもこうした考え方を受け入れる素地が整いつつあると、Final Aimの横井氏は指摘する。特にハードウエア製品ではデザインが売れ行きを大きく左右するのに加え、最近は意匠や商標などデザイン回りの知財管理でつまずく企業も増えているからだ。「製品化してから他社に商標を抑えられていることが判明した」「デザイン会社との契約に不備があり権利が自社になかった」といった事例が決して少なくないという。

 さらに、スタートアップにとって「デザインに力を注ぐことは資金の獲得にもつながる」(Final Aimの朝倉氏)。デザインによって製品が売れる、あるいは知名度が高まるということを説明できれば、外部からの投資を引き出しやすくなるからだ。

ビジネスモデルも変える

 ソニーデザインコンサルティングの福原氏は、今回の取り組みを通じて「デザイン会社のビジネスモデルも変えていきたい」と意気込みを語る。デザインが企業価値の向上に有効だと証明できれば、従来型の造形やロゴ作成などの対価にとどまらず、より大きなビジネスに発展する可能性が出てくる。

 日本企業は、技術力が高くてもデザインで負けていると指摘されることが多い。こうした前評判を覆し、世界に羽ばたくハードウエアスタートアップが次々と日本から生まれるか。ソニーデザインコンサルティングとFinal Aimの取り組みは、その試金石となりそうだ。

(写真:加藤 康)
(写真:加藤 康)
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