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 ソニーのイメージセンサー事業が試練を迎えている。最大級の顧客だった中国・華為技術(ファーウェイ)向けの供給は再開したものの、同社への供給量が米中貿易摩擦以前の水準に戻ることはなさそうだ。同社に代わる顧客の開拓や車載用途の拡大といった施策が急務になっている。

 ソニー全体の業績は好調である。2020年10~12月期(20年度第3四半期)の連結決算は、売上高が前年同期比9.5%増の2兆6965億円、営業利益が同19.7%増の3592億円と、増収・営業増益を達成した。20年度通期では、同社初の純利益1兆円超えも視野に入る。

 20年度第3四半期の連結決算をセグメント別に見ると、巣ごもり需要の恩恵を受けた「ゲーム&ネットワークサービス(G&NS)」分野や「音楽」分野が増収・営業増益となった一方、イメージセンサーが主力の「イメージング&センシング・ソリューション(I&SS)」分野は減収・営業減益だった。セグメント別で営業減益だったのは、I&SS分野だけである。

20年10~12月期(20年度第3四半期)のI&SS分野の業績は前年同期比で減収・営業減益(出所:ソニー)
20年10~12月期(20年度第3四半期)のI&SS分野の業績は前年同期比で減収・営業減益(出所:ソニー)
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 その最大の要因は、スマートフォン向けの売り上げが減ったこと。新型コロナウイルス禍の影響もあるが、それ以上にファーウェイへの供給が一時的に止まった影響が大きい。米国政府の禁輸措置によって、20年9月15日以降、同社にイメージセンサーを供給できなくなった。その後、ソニーは米国政府の許可を得て同年11月下旬にファーウェイへの供給を再開したが、供給量は減っているという。ファーウェイが禁輸措置に備えて在庫を積み増していた上、同社のスマホの販売量自体が落ちているからだ。ソニー代表執行役副社長兼最高財務責任者(CFO)の十時裕樹氏は、ファーウェイへの供給量について、「今後、元の規模に戻せるとは考えていない」と語る。

 ソニーにとってファーウェイは、高性能かつ高価なイメージセンサーを大量に購入してくれる上客だった。その上客にかつてのような売り上げを期待できない以上、挽回に向けた施策が不可欠だ。「汎用品の販売増によるシェア拡大や顧客の分散を進める」(十時氏)。