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 日本電産が三菱重工業の工作機械事業を買収する。日本電産は買収の目的として技術や人材の獲得を挙げるが、この他に「生産設備の内製能力を確保する」という狙いがありそうだ。世界的な電気自動車(EV)シフトに向けて、リソースの奪い合いが始まった。

 “予告”はあった。日本電産が2021年1月25日に開いた決算説明会で、同社代表取締役会長兼最高経営責任者(CEO)の永守重信氏は、「技術を持つ会社のM&A(合併と買収)をやる」と宣言していた。それから2週間もたたずに有言実行した形だ。

 三菱重工の工作機械事業は、歯車工作機械などで定評がある。日本電産は、買収で獲得した技術や人材を、EV用駆動ユニット「E-Axle」に活用する方針だ。E-Axleは、モーターやインバーター、減速機から成り、同社の戦略製品に位置付けられている。

日本電産の「E-Axle」(出所:日本電産)
日本電産の「E-Axle」(出所:日本電産)

 さらに、買収によって日本電産は工作機械自体の生産能力も手に入れたことになる。これも狙いの1つとみられる。前述の決算説明会において、永守氏は設備の内製力の重要性についても言及していた。「部品も足りないが、それよりもネックになるのは設備だ。HDDのときもそうだったが、我々が欲しくても工作機械メーカーがすぐに造ってくれるわけではない」(同氏)。

 日本電産は、EV用駆動ユニットの需要が25年ごろに一気に拡大するという予測の下、技術開発やサプライチェーン構築を進めている。しかし、半導体の好景気などもあり、工作機械をはじめとする生産設備はしばらく奪い合いが続きそうだ。ならばいっそ、生産能力を持つ会社ごと買ってしまえという力技に出た格好である。

 三菱重工の工作機械事業は、中期経営計画などでもほとんど言及されておらず、中核事業とはいいがたい存在だった。それが一転、日本電産による買収で、EV関連事業の推進力と位置付けられることになった。世界的なEVシフトは、自動車産業にとどまらず製造業全体の構造を大きく変えるものになりそうだ。