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 ENEOSホールディングスは2021年2月8日、スタートアップと連携し、自社の給油所を拠点にした自動配送サービスの実証実験を始めた(図1)。「牛めし」が主力の松屋フーズなど10店舗の料理や日用品を東京・中央の給油所に集荷。電動の無人宅配ロボットを使い、歩道経由で同地域の「リバーシティ21」マンション群に届ける。複数店舗からの自動配送は「国内初」(ENEOSホールディングス)。電気自動車(EV)需要の拡大で石油元売り業の先行きに不透明感が増す中、国内約1万3000カ所でシェア過半を握る給油所を生かした成長を模索する。

図1 給油所を拠点にした自動配送サービス実証実験
図1 給油所を拠点にした自動配送サービス実証実験
無人宅配ロボットの荷積みや充電場所として東京・中央の給油所「ENEOS月島SS」を活用する。配送システムはENEOSとエニキャリ(東京・千代田)が共同で手掛け、ZMP(東京・文京)製の車両を使って配送する。(出所:ENEOSホールディングス)
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 荷積みや車両充電の拠点として給油所「ENEOS月島SS」を使う。飲食店やコンビニから人手により荷物を集め、無人宅配ロボットで対象マンション3棟の共用玄関まで送る。実証実験の対象は1000戸強。給油所からマンション群までの距離は約800mで、所要時間は15分だという。2台の無人宅配ロボットを運用する。1台当たり4カ所に荷物を積め、最大4注文を同時に配送できる。

 利用者は、ENEOSと宅配代行サービス運営のエニキャリ(東京・千代田)が共同で手掛ける配送システムを使い、WEBサイト経由で注文する。無人宅配ロボットが到着したら、スマートフォンなどに表示したQRコードを鍵としてかざし、荷室から荷物を取り出す。配送料は1回の注文当たり297円(税込み)に設定。稼働率や採算性、技術の利用可能性を検証する。

 活用する無人宅配ロボットは、ロボット開発スタートアップのZMP(東京・文京)が開発した「DeliRo(デリロ)」である。電動車いすと同じ「歩行補助車」の枠組みで認可を受け、歩道を走れるようにした。実証実験中は監視員が後方から歩いて追跡する。同社は東京・中央の同地区で「ロボタウン構想」を掲げ、自動運転1人乗りロボットによるシェアリングサービスを展開中である。無人宅配ロボットの運用でも同構想の知見を生かす。

 同ロボットは4輪を備えた箱型の形状である。最大積載量は50kg。出力600Wのモーターを搭載し後輪駆動で走る。稼働時間は約4時間で、車速は6km/hまで出せる。車両上部に3次元LiDAR(レーザーレーダー)、前部に単眼カメラとステレオカメラ、2次元LiDAR、左右側部には単眼カメラ、後部に単眼カメラと2次元LiDARを備え、周囲の状況を検知する。車両寸法は全長962×全幅664×全高1089mm。質量は約120kgである。

 「ウィズコロナ、ポストコロナ時代の新たな配送インフラ構築を検討してきた」――。21年2月12日開催のオンライン記者会見において、ENEOS未来事業推進部事業推進1グループマネージャーの吉田貴弘氏は同実証の背景をこう語った。新型コロナウイルス感染症による社会不安が続き、ロボットを使った非接触配送の需要が拡大するとみる。

 当面の課題は利用を増やすこと。実証開始から数日経過したが「1日当たり2、3件の注文数にとどまる」(ENEOSホールディングス)。サービスの実用化に必要なデータ量としては不安感が否めない。

 同社は21年度(21年4月~22年3月)に遠隔監視での運用を、22年に同地域での本格的なサービス化を目指している。さらに、既存の給油所網を生かした他地域での展開も視野に入れる。新型コロナ禍という逆境を商機に変え「脱石油」を加速できるか。連結売上高10兆円超(21年3月期は7.5兆円予想)の巨体が静かに動き出している。