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 2011年3月11日午後2時46分、東北地方を中心とする東日本をマグニチュード9.0の巨大地震が襲った。その50分後、それまで想定していなかった巨大な津波が福島第1原子力発電所に押し寄せ、未曽有の原子力災害を引き起こした。想定外の巨大な地震と津波に見舞われたとはいえ、なぜ炉心溶融(メルトダウン)にまで至ってしまったのか。あらためて事故の経緯を振り返ってみる。

Q1:福島第1原発を襲った地震と津波の規模は?
Q2:地震発生時の福島第1原発各炉の稼働状況は?
Q3:地震直後の状況はどうだった?
Q4:炉心冷却が維持できなかったのはなぜ?
Q5:どうして全電源を喪失してしまったのか?
Q6:1~3号機が炉心溶融したのはいつごろ?
Q7:原子炉建屋が爆発したのはなぜ?
Q8:放射性物質による大気汚染はなぜ起きた?
Q9:事故当時の作業者の被曝(ひばく)状況は?
Q10:汚染水問題とは?

事故の経緯
(東京電力ホールディングスの資料などを基に日経クロステックが作成)
事故の経緯
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Q1:福島第1原発を襲った地震と津波の規模は?

 東京電力ホールディングスの報告書によると、地震による原子炉建屋(RB)の最地下階での加速度は、最大で550ガルだった。ほとんどは、耐震安全評価基準を下回っており、地震による揺れそのものは設備の耐震安全性評価の想定とおおむね同程度だとしている。

 一方、津波は想定を大幅に超える規模だった。福島第1原発が想定していた津波の高さは最大でも6m強程度。これに対し、3月11日午後に同原発を襲った津波の高さは、13m以上あったとみられている。想定外の巨大津波によって主要なエリアのほとんどが浸水した。

地震直後に福島第1へ押し寄せる津波
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地震直後に福島第1へ押し寄せる津波
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地震直後に福島第1へ押し寄せる津波
(出所:東京電力ホールディングス)

Q2:地震発生時の福島第1原発各炉の稼働状況は?

 福島第1原発は6基の沸騰水型軽水炉(BWR)を擁していた。事故当時、そのうち1~3号機が稼働中だった。残る4~6号機は定期検査中のため運転を停止していた。

事故後の福島第1原発
事故後の福島第1原発
手前から1、2、3、4号機の順に並んでいる。(出所:東京電力ホールディングス)
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Q3:地震直後の状況はどうだった?

 地震発生直後に、1~3号機の炉心には制御棒が挿入されて緊急停止(スクラム)した。通常、BWRの炉心は蒸気タービンを回す蒸気を回収して冷却・復水して再循環させて冷却しているが、緊急停止時にはこの冷却系は機能しなくなる。そのため、同原発に限らず全ての商業用原発は複数の冷却機能を準備している。

 例えば、1号機は、電源を必要としない非常用復水器(IC)や、高圧注水系(HPCI)という冷却機能を備えていた。ICは原子炉圧力が上昇した場合に、炉内の蒸気を導いて水に戻し、炉内の温度と圧力を下げる。HPCIは圧力容器内の高い蒸気圧を利用してタービンを回し、ポンプを駆動して冷却水を注入する機能である。地震直後はこうした非常用の冷却系が正常機能していた。

Q4:炉心冷却が維持できなかったのはなぜ?

 電力が供給されず、1号機はHPCIを起動できなくなった。電源を必要としないはずのICも、閉じてしまった配管上の弁の開放には電力が必要で、それを動かせなかった。そのため全ての冷却機能が停止してしまった。

 ICと同様の原子炉隔離時冷却系(RCIC)やHPCIが備わっていた2・3号機では、一時的にそれらが機能して冷却を維持していた。しかし、最終的にはバッテリーの枯渇や電源車の接続失敗などによって全電源を失い、やはり非常用冷却機能が停止してしまった。

 消防車を用いて消火系ラインから淡水および海水の注水を試みたが、結果的には1~3号機のいずれも原子炉圧力容器への注水に失敗した。

Q5:どうして全電源を喪失してしまったのか?

 地震の直後に送電設備の破損で同発電所への外部からの給電は断たれてしまった。そうした事態を想定して、福島第1には非常用電源としてバッテリー(直流電源)および非常用ディーゼル発電機(DG)があった。地震の直後は、非常用DGが自動起動した。

 非常用DGについて言えば、1~4号機はそれぞれ2台ずつ計8台の非常用DGを備えており、相互接続も可能だった。しかし、外部からの浸水を想定していないタービン建屋にあった6台の非常用DGは、津波による浸水で機能停止に陥ってしまった。2号機と4号機に各1台ずつ用意されていた空冷式の非常用DGは、別の建屋にあったため浸水を免れたものの、地下の電気室が浸水して電源盤が水没。やはり機能しなくなった。バッテリーは、充電しなければ供給できる電力は限られている。こうして全交流電源を喪失してしまった。