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 福島第1原子力発電所の事故は、6基ある原子炉のうち、1・2・3号機が炉心溶融に至り、さらに1・3・4号機では水素爆発で原子炉建屋が損壊するという、未曽有の原子力災害となった。2011年3月の事故から10年、現場では原子炉の解体に向けた準備が進められている。事故が起こった原子炉、そして廃炉の状況はいまどうなっているのか。福島第1の現状をみてみる。

Q1:福島第1原発の廃炉は何が難しい?
Q2:原子炉の現在と今後の作業計画は?
Q3:廃炉が完了するのはいつ?
Q4:廃炉の費用はいくら?
Q5:原子炉の跡地はどうなる?
Q6:現在の冷却システムと汚染水の状況は?
Q7:トリチウムはなぜ分離できない?
Q8:敷地内のタンク容量はいつまでもつ?
Q9:福島第1原発の他に、廃炉予定の原発はある?
Q10:世界で廃炉を完了した原発はある?

廃炉が進む福島第1原子力発電所
廃炉が進む福島第1原子力発電所
写真は3号機の原子炉建屋。左は震災直後、右は2018年2月の状況。(出所:東京電力ホールディングス)
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Q1:福島第1原発の廃炉は何が難しい?

 ハードルは大きく分けて5つある。その中で最も難関とされるのが、炉心溶融によって生じた「燃料デブリの取り出し」だ。高い放射線量の中、溶け落ちた燃料デブリを回収しなくてはならない。水素爆発よるがれきの散乱によって阻まれている、使用済み燃料プール(以下、燃料プール)からの「使用済み燃料の取り出し」も容易ではない。汚染された「廃棄物処理」や増え続ける「汚染水対策」、作業者の「労働環境の向上」も課題となっている。

2号機格納容器で確認された堆積物
2号機格納容器で確認された堆積物
2019年2月、トング状の遠隔メカを2号機の格納容器内に送り込み、堆積物の把持に成功した。(出所:東京電力ホールディングス)
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Q2:原子炉の現在と今後の作業計画は?

  • 1号機
    27~28年度に使用済み燃料の取り出しを開始するため、現在、水素爆発で生じたがれきの撤去作業が進められている。炉心溶融で生じた燃料デブリの取り出し時期は未定。

  • 2号機
    ロボットアームによる燃料デブリの試験的な取り出しを22年に開始する。炉心溶融に至った1~3号機の中で最も早い動きだ。24~26年度には使用済み燃料の取り出し開始を予定しており、原子炉建屋の南側ではそのための開口工事が進んでいる。これに先立ち、同建屋の西側には17年5月に開口が設けられ、調査ロボットなどの出入り口として使われている。

  • 3号機
    21年2月末、燃料プールからの使用済み燃料の取り出しを完了した。1号機と同様、炉心溶融で生じた燃料デブリの取り出し時期は決まっていない。

  • 4号機
    事故当時は定期検査中で炉心に燃料がなく、1~3号機のような炉心溶融は起こらなかった。そのため燃料デブリは存在しない。14年12月には燃料プールからの使用済み燃料の取り出しを完了。いまのところ、1~4号機の中では一番スムーズに廃炉作業が進んでいるといえる。

Q3:廃炉が完了するのはいつ?

 短くて20年後、長ければまだ30年はかかるとみられている。政府がまとめた廃炉の工程目標「中長期ロードマップ」では、廃炉措置の完了時期を全ての原子炉が冷温停止状態に至った11年12月から30~40年後と見込んでいる。