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 国家プロジェクト「SIP(戦略的イノベーション創造プログラム)『自動運転』」は2021年4月20~21日、報道陣向けの試乗会を東京・江東で開いた。東京臨海部での実証に参画する29団体のうち、ホンダやトヨタ自動車、日産自動車など8団体が自動運転車を持ち込み現状の技術水準を披露した。

国家プロジェクト「SIP(戦略的イノベーション創造プログラム)『自動運転』」が報道陣向けに開催した試乗会。8団体が自動運転車を持ち込んだ。(撮影:日経クロステック)
国家プロジェクト「SIP(戦略的イノベーション創造プログラム)『自動運転』」が報道陣向けに開催した試乗会。8団体が自動運転車を持ち込んだ。(撮影:日経クロステック)
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 量産車においては、ホンダが21年3月に投入した「レベル3」の技術が制度上の世界最高水準となる。トヨタも同レベルを見据えた運転支援技術(レベル2+)を同年4月から量産車に適用した。これら高度な自動運転を実現するには周辺検知に使うセンサー類の機能向上や複数搭載が欠かせず、システムコストの膨張を招きやすい。

 「競争が自動運転のコストを下げる」――。SIP自動運転担当プログラムディレクターでトヨタ先進技術開発カンパニーFellowの葛巻清吾氏は同試乗会で自動運転車のコスト対策についてこう説明。センサー類など機器の標準化・共通化を安易に進めるのではなく、各メーカー間の技術競争を起こすことがコスト低減には不可欠だと強調した。

SIP自動運転担当プログラムディレクター/トヨタ先進技術開発カンパニーFellowの葛巻清吾氏。(撮影:日経クロステック)
SIP自動運転担当プログラムディレクター/トヨタ先進技術開発カンパニーFellowの葛巻清吾氏。(撮影:日経クロステック)
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 その上で葛巻氏が訴えるのは「協調領域」と「競争領域」をバランス良くつくることの重要性だ。SIPはこのうち協調領域を担い、単独企業では実現困難な技術開発を支援している。

 現在進行中のSIP第2期自動運転(18~22年度)はシステムとサービスの拡張に軸足を置く。東京湾岸部における実証では、地域内の高精度地図データ「ダイナミックマップ」を各団体に配布し、それぞれが技術開発に生かしている。同地域では、路車間通信によって信号機から情報を受け取り交通状況に合わせて加減速を制御するといった技術開発も進む。

 センサー類をはじめとする機器については、システム統合に向けたシミュレーションなど一部はSIPが支援するが、基本的には競争領域と位置付ける。

 共通仕様の機器を1社が独占して大量生産すればスケールメリットによって構成部品の単価を下げられ、製品としてのコストも一時的には低減できる。ただし、これでは抜本的な設計革新が起こらず、さらなるコスト低減は困難になるとの見立てだ。部品の供給数がメーカーの利益に直結するため、高機能化でセンサーの搭載個数を減らそうとする動きも起こりにくい。

 SIP葛巻氏は「多様な企業の参入でコストが下がれば自動運転技術は普及する」と見込む。こうした意味でも、東京湾岸部の試乗会に参加した8団体の多様性は意義深いという。

 内訳は、自動車メーカー4社(ホンダ、トヨタ、日産、SUBARU)、部品メーカー2社(フランスValeo日本法人、ドイツContinental日本法人)、ベンチャー企業1社(ティアフォー)、そして1大学(金沢大学)である。各団体、認知・判断・制御の領域でそれぞれの思想に沿った技術開発を続けている。

ホンダ:SIP自動運転試乗会。(撮影:日経クロステック)
ホンダ:SIP自動運転試乗会。(撮影:日経クロステック)
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トヨタ:SIP自動運転試乗会。(撮影:日経クロステック)
トヨタ:SIP自動運転試乗会。(撮影:日経クロステック)
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日産:SIP自動運転試乗会。(撮影:日経クロステック)
日産:SIP自動運転試乗会。(撮影:日経クロステック)
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