NTTは2021年5月12日、同社が2030年代の実現を目指す次世代情報処理基盤「IOWN(Innovative Optical and Wireless Network)」の実現に向けて、研究開発体制を強化すると発表した。具体的には21年7月に500人規模の「IOWN総合イノベーションセンタ」を新設する。同センタ長には、元富士通副社長で現NTTアドバンステクノロジ顧問の塚野英博氏が就任する。IOWN構想や6Gの実現に向けて技術開発を加速する考えだ。
「(NTT持ち株会社にとって)4番目の総合研究所になる。Research(研究)に強いこれまでの3つの総合研究所と異なり、導入段階に近いDevelopment(開発)を担う。NECや富士通、その他のパートナーとの連携を深めて、人材も派遣しながら運営していきたい」。新設するIOWN総合イノベーションセンタの狙いについて、NTT社長の澤田純氏はこのように説明する。
NTTが打ち出すIOWN構想は、光技術を活用することで、電力消費を大幅に抑えた超高速・大容量、超低遅延な情報処理基盤を作り上げることが狙いだ。光信号と電気信号を不可分に融合する光電融合技術が鍵を握る。
光電融合技術をサーバー内のCPUやアクセラレーターを結ぶ配線のほか、CPUと回路を結ぶI/O(入出力)部分、将来的にはCPU内部の配線まで活用することで、既存のサーバーアーキテクチャーも変化を遂げる。NTTが「ディスアグリゲーテッドコンピューティング」と呼ぶ新たなコンピューティングアーキテクチャーである。NTTはこのディスアグリゲーテッドコンピューティングをIOWN構想のキーデバイスの一つとして位置づけ、25年に完成させたいという目標を示している。
IOWN構想に基づいた仕様ができても、機器を実際につくるパートナーが増えなければ、IOWN構想は絵に描いた餅に終わる。そこでNTTは20年にNECと資本提携を結んだり、21年4月には富士通ともIOWN構想推進に向けて業務提携したりするなど、機器を造るパートナーを続々と増やしている。富士通との提携では、両社でディスアグリゲーテッドコンピューティングの実現に向けて共同研究開発を進める。