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80万件もの自治体データを分析し、サービス化

 ガバチョスの開発には、コニカミノルタのものづくりのノウハウを生かした。同社の品質マネジメントの方針は「測定なくしてコントロールなし」。漠然とした課題をデータの収集で数値に落とし込み、製品の品質を向上させてきた。ガバチョスの開発では18年度以降、全国50以上の自治体と連携して「全庁業務量調査」というアンケート調査を実施し、業務に関する80万件ものデータを収集した。自治体間の比較ができるように質問項目をそろえたほか、回答者の役職に偏りがないようにするなどデータの取り方を工夫した。

 収集したデータは協業している、人工知能(AI)開発を手掛けるチェンジの自然言語処理技術で解析した。業務で使う言葉は自治体により表現が異なる場合もある。例えば、ある自治体では「運動公園」と呼ぶ施設を別の自治体では「体育施設」と呼んでいる。そのような表現の差をAIでまとめ上げて業務と作業内容を整理した。標準化の手法に精通したコニカミノルタの品質保証に携わるデータアナリストも参加し、最終的には自治体の仕事を4800種類に分類した。

 武井氏は「仮説を立てて検証するサイクルを繰り返すという、品質向上のプロセスも生かしている」と言う。例えば紙に依存した仕事は電子化が進んだ仕事より作業時間が長いという仮説を立てた。分析で仮説が正しいことが分かり、電子化を進める必要性を確認できた。電子化の手法についても仮説と検証を繰り返すことで、RPAやAIを使ったチャットボット、電子申請などさまざまなツールの中から各自治体の業務別に適した手法をすぐに提示できるようになった。

コニカミノルタでデジタルワークプレイス事業本部長を務める武井一常務執行役
コニカミノルタでデジタルワークプレイス事業本部長を務める武井一常務執行役
100年以上培ったものづくりのノウハウを活用してガバチョスを開発したという。(出所:コニカミノルタ)

 7月から自治体や、自治体に対してビジネスを展開するITベンダーに販売する。サブスクリプション(定額課金)制を予定する。料金の詳細は未定だが、自治体の負担にならない価格帯にする。職員1人当たり月額料金は、正規職員の残業時間に換算すると30分程度になる見通し。サービスの提供開始から2年で約1000の自治体への導入を目指す。将来的にはガバチョスを応用して、地方銀行や教育委員会向けにも業務の改善につながるサービスを提供する方針だ。